1985年11月、私家版として刊行された西卓(西一知・1929~2010)の合本詩集。
ここに『西卓詩集』として収めたものは、西一知の詩への出発点となった西卓詩集『水の装い』をはじめとする西卓時代(主に1950年代、著者30代)の作品集全4冊の全作品です。
原本は、久しく著者の手元にもないものがあり、あってもボロボロで開くに耐えられぬ状態で、友人や図書館から借りるなどして、装丁はともかく、活字はここに完全に復元することができました。
最近、戦後詩の見直しにともなって、著者のもとにも西卓時代の詩集はないかとの問い合わせも多いが、ご承知のように、当時の印刷、紙関係の事情は極端に悪く、とりわけ少部数の詩集などは、30年を経た今日では著者でさえ入手はほとんど不可能で、出版したという事実そのものまで疑われかねないというのが、本書をまとめることになった動機です。
戦後の特殊事情によるとはいえ、旧作をいま改めてお目にかけることにはいささかのためらいはありますが、ここではもはや私情をはさむことはやめて、一発行人として、50年代のこれらの詩篇が80年代の今日でもなお読めるものであるかどうか、戦後詩へのいささかの問題提起がここに認められるかどうか、すべては読者諸賢のお目にゆだねたいと思います。
出版社からも刊行のお声をいただいたところもありますが、旧作は市販までする思いはなく、お読みくださる方にのみ頒つべく、少部数、自家版としました。(付記)
『水の装い』旧漢字は新漢字に、また、促音、拗音は小さく改めました。
『大きなドーム』促音、拗音も小さくしました。
『乾いた種子』冒頭の「夜」は、プロローグとしました。
各詩集の扉、目次位置、奥付は、原本レイアウトの感じを復元しました。他は、すべて原文に忠実に、明らかな誤字、脱字を訂正するにとどめました。
(「後記」より)
目次
・水の装い 装幀・大家鋭郎、1954年12月、三角旗社発行
- 初夏の食卓
- 黄昏のバラッドⅠ
- 黄昏のバラッドⅡ
- ナルシスの変貌
- 燻銀の太陽の浜辺で
- 青い真昼
- 貝殻だけの夜
- 囚われた夜
- 祭
- 約束事
- 頌歌
- 深夜
- 月が街を食べました
- 木賊類群落発生の次第
- 半分瞼をあげてる月
- 金平糖のある風景
- 形象
- 跋 沢村光博
・大きなドーム 装幀・北園克衛、1956年3月、VOUクラブ発行
- Troy ounce
- 愛についての詩篇
- 報酬
- 黄昏詩篇
- 一九五五年六月一三日
- 白い手袋の人
- 陰険な日日
- 雲
- 放蕩息子のmetamorphoses
- サーカス
- 夜の部分
- 重たい本
- コルネット吹きの午後の恐い夢
- 恋と日日
- 冬のエッチング
- ★渚いついて
- 煙
- 家兎
- 九月の挿話
- 一九五五年八月
・乾いた種子 装幀・笹岡信彦、1958年5月、国文社発行
- 夜(プロローグ)
- 結婚
- 大きな声
- A ROCK FANTASY
- シーソー
- 地帯
- 黄昏のバラッド
- 彩られた肖像
- 薄い日ざし
- 恋歌
- はれま
- ぼく等の理由
- 高いところで鐘が鳴る
- 庭
- 夏の思い出
- 果樹園
- しゅう雨の後で
- 海峡
- Pardon, monsieur
- 一九五七年十一月
- 昨日(エピローグ)
- あとがき
・ひびきあるもの 1962年3月、文林書房発行
- 夜明け
- 法則
- ぼくらの背後の天使
- 事物には無数の意味が
- 午後
- 赤いブラウスの少女
- 洪水
- 冬
- おぼろなあなたの道のうえで
- 小さな家具の谷間で
- 恋
- 存在について
- 夜のなかに
- Whirlwind of Lovers
- S山脈を越える
- あとがき
後記
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