2019年11月、デコから刊行された高橋順子の第13詩集。装幀は菊地敦己。
単行詩集としてはこれが十三冊目となります。
初出紙誌は第I章が「森羅」「櫻尺」「花椿」「葡萄」「山梨日日新聞」「歴程」「短歌往来」「抒情文芸」、第Ⅱ章はデコ編集制作による健康情報誌「からころ」連載の中から選びました。最後の詩は「日経回廊」。第Ⅲ章は「江古田文学」「ユリイカ」「現代詩手帖」「文藝春秋」「読売新聞」です。各編集者の方々にお礼申し上げます。
じつは四年半前に連れ合いの作家・車谷長吉を亡くしました。六十九歳でした。この人は関西で言う「甘えた」ではありましたが、文学については厳しい人でした。この詩集も「なんだ、この程度か」と憫笑する声が聞こえます。仕方がありません。これが私のいまの精一杯の力です。
この人のことを私は「くうちゃん」と呼んでおりました。街中で私がまるで孫を呼ぶように「くうちゃーん」と大声を出しましたら、不精ひげの初老の男が当然のように振り向いたこともありました。
十年前にデコから第十詩集『あさって歯医者さんに行こう』を上梓したのですが、その折りデコ編集部に所属していた齋藤(現姓神武)春菜さんと、装幀をしてくださった菊地敦己さんが「十年後にまた詩集をつくりましょう」と口約束でしたけれど、言ってくださったのです。それがほんとうに実現することになったとは、なんとうれしいことでしょう。
(「あとがき」より)
目次
Ⅰ
- むくげの花
- ブナの王さま
- 見たことのない野原
- 小さな庭から
- 緑の家で
- 女たちは
- 「あ」
- 海の光
- 一陽来復
Ⅱ
- つくしをつみに
- 靴の音が
- 待合室で
- 或る日のおじいさん
- かたつむり
- くるみパン
- ゆらり鯉
- 目の習慣
- 悪い椅子
- ことばのなる木
- 涙の上の舟
- 道
- 大名時計
- 鳥の名前
- お元気で
- カラスの仕事
- 雪だるま
- 海峡ホテル
- 不幸なお尻
- 未知のわたし
- 雲をひろって
Ⅲ
- あの人
- はやく、はやく
- 雨のち曇り
- 愚かなうた1~17
- 遍路笠をかぶって
- 鈴が鳴っている
あとがき