1988年8月、詩学社から刊行された池上貞子(1947~)の第1詩集。装画は鯨井和子、装幀は宮下正身。池上は台湾文学者。
何がきっかけだったか忘れましたが、この春からまた集中的に詩を書いています。ふだんは思いたったときに、ぽつぽつと記しておくくらいですのに、ごくまれにこういう時期があって、平凡なひとりの人間の人生にまでふりまかれている、「見えざる意志」の戯れに驚かされます。
九年前はじめて中国を訪れたあとも、心身ともにかきまわされたようになって、しばらく今と同じような状態に陥ったことがありました。そのときに生まれたのが、ここに納めたつたない詩の数々で、『黄の攪乱』というタイトルもそれに由っています。
詩作は子供のころからの道連れとして、私にとってはあまりにもプライベイトなありようでしたから、これまで詩集を出すことなど考えてもみませんでした。けれども勤務先の短大で、同僚の先生方が学生たちの文章をごくさりげなく本の形にしているのを見て、こだわりを捨てることにしました。ですから記念すべきこの第一詩集は、現在の心持ちとはすこし違うところもあるのですが、私が身軽く出歩くためにどうしても脱ぎ捨てなければならなかった、重い外套なのだと思います。
出版にあたり、ご自身中国を文学世界に組み入れられて、そのことに悪戦苦闘している私を苦笑しながら見ていてくださる木島始先生と、異なる表現方法で同じ世界へのアプローチを試みてくれた、表紙・挿画の鯨井和子女史、装丁の宮下正身氏、そしてこれら全体を統括指導してくださった編集の岡田幸文氏に、心より敬意と感謝の意を表します。
(「あとがき」より)
目次
・プロローグ
- 1野菊
- 2予感
・初めての中国旅行
- 1天安門
- 2胡同(フートン)
- 3夕日
- 4円明園Ⅰ
- 5円明園Ⅱまたは風
- 6内モンゴルの草原にて
- 7インドゥマ=美しい花
- 8キツネ狩り
- 9どうしてももち帰れないもの
- 10黄河
- 11無題
- 12海棠
- 13昼下がり
- 14大同の雨
・攪乱されて
- 1暖冬
- 2やさしさの海へ
- 3心だけを見つめて
- 4秋雨の日曜日
- 5女だけの午後
- 6おしゃべり女
- 7哀しみの歌
- 8しぼんだ風船
- 9田螺哀歌
- 10冬のばら
- 11初雪
- 12日暮れに
- 13天神参り
- 14戦争
- 15開田高原
- 16安堵
- 17八月児(やつきご)
- 18童話
- 19無題
- 20八ヶ岳
- 21れんげは
- 22酔いまぎれの歌
- 23柿の実が
- 24紫陽花
- 25草野球
- 26夜の海に
・エピローグ
- 1 このまま時が
跋 木島始
あとがき
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