1984年7月、手帖舎から刊行された西中行久の第2詩集。装幀は宮園洋。刊行時の著者の住所は岡山県玉野市。
早いもので、はじめての作品集「歩行幻記」を刊行してから五年が経とうとしている。その間、どう歩いてきたかといったかたちで、歳月のひだを折り込む想いでまとめたのが、こんどの作品集である。
主として、一九八〇年から一九八四年にかけ、「詩脈」や「潮流詩派」に発表させていただいたものを含めた三〇篇である。題して「定刻」とした。
なにげない日常に、ある日ふと、なにかのきっかけで別の世界がかいまみえる……そこに、ある生の断層をみる、といった想いは、だれにもある経験であろう。私の作品も、また、そのような、日常のなかに非日常をみるといった視点から発想したものが多く、街の寓話とでもいったかたちにもなっているかと思う。
第一集を刊行したあと、詩を書く人たちとの新しい出会いがあり、はげましがあり、私も少しは詩のもつカオスの深みへはまり始めたと錯覚するところまできたようにも思っている。
(「あとがき」より)
目次
- 椅子
- 梱包
- 吊革にぶらさがって
- 窓
- ピンが一本
- 町はずれ
- 遠い隣り
- 出来ごと
- 昨日の水
- 運ぶ
- 歩く人
- 顔
- よそ見
- 空模様
- うつし絵
- 定刻
- 表札
- 眼
- 寓話
- 視角
- 1・隣人 2・樹の下 3・虚実
- アルバム
- 木もある風景
- 虫
- 闇
- 幻の犬
- 遠回り
- 始末
- 経歴
あとがき