1976年9月、思潮社から刊行された原葵の第2詩集。装幀は藤林潤也。刊行時の著者の住所は東京都港区高輪。
天王星の凶影の下に牡羊座に生まれ、三歳の時、親しい者がヘビと抱きあっているのを見てしまいました。幼女時代は吃音の九官鳥の振りをして過ごし、祖母に親しみました。
十歳の時父が亡くなってから度々とんぼに化けて悲しむようになりました。次第に祖母とは疎遠になりました。紅いものによって聖められ、女学校ではキリストと親しい関係でした。時折は男となって街を徘徊しました。その後は専ら腹話術の練習に関心を抱きました。わたくしが人形なのか、それとも腹話術師なのかわからなくなって目眩くのでした。
第一詩集「野猿伝説」を書くことによって猫などの如きものが個的に神であることを発見し、今はすべての事をすべての者と許しあうために生まれてきたと信じ、人間が人間によって栄光を与えられることを夢みます。しかし春ともなれば神の思寵の兆しをさがして気狂いじみるばかりです。
(「自叙」より)
目次
Ⅰ 遠近法
- 遠近法の書
- 虫類
- 腹話術師の家族
- 通信
- 吃音者からの書翰
Ⅱ 植物園
- 鏡の中の季節
- 異端の衣服を着て花に耳をそばだてる人物
- 植物祭Ⅰ
- 植物祭Ⅱ
- 花狂い
Ⅲ ヨシヨシ町界隈
- 幻想商会
- 八百屋
- 非情の歯科医
- 急行自転車
- 病院
- 箱類図鑑
- 電話器
- 表情論
- 猥褻算の可能性について
- 新語法、またはヨシヨシ町界隈
Ⅳ 誕生月の子供達
- 聖バレンタインの朝
- サナギ摘み
- 誕生月
- 卵やのおじさん
- サイマ牧場の春
- キンポウゲ
- 指笛
- かたつむり
- ミミズの泣く夜
- 草の実が鳴る日
- 砂丘に棲むもの
- 夏の計画
発表誌一覧
自叙