2006年9月、七月堂から刊行された佐藤恵(1961~)の詩集。造本は稲川方人、装画は著者。著者は秋田県象潟町生まれ。
少女の頃に毎晩となえた願いは、小石のように積み上げられて、時折くずれては胸を打った。なにも期待しないで目を開けること。叶えられないと知りながら目を閉じること。
今ではあきらめによって心をかるくすることも覚えたけれど、ひんやりとした小石を、いまだにかたく握っている。
それでも、多くの問題は笑うことによって解決できると考えているし、思いは届くと信じている。
ひとりで丘の上までやってきた。ささやかでいとおしいわたしたちの明かりが見える。かつて暮らしていた窓の明かりもともったことに気づきほっとする。そのいとなみを眺めながら座っていると、時おり誰かがやってきて隣に座り、ここからは小さく見える閉じられた窓の話をする。わたしは自分の窓のようにそれを眺める。みんなそれぞれ帰ってしまった後にも、ひとり眺める。それから手鏡をかたむけその窓に光を送る。曲がった路地の向こうの窓にも、どんなに遠くの窓にも、誰かが同じようにこの光を受けてかたむけ、かたむけ、そうやってきっと届くと信じている。
それぞれの窓に向けて送った思いの二年分をまとめました。読んでいただきまして、ありがとうございました。
(「あとがき」より)
目次
- 光くゆ
- かけら
- ふたご
- わくらば
- ことり
- 虚空
- 乾電池
- ひろびろと
- ほたる
- サカミさん
- よしださん
- ちりおえるまで、
- ひたひたと
- すずしろ
- 汽水域から先へ
- 光る庭
- 苺
- 娘よ、夕暮れ時に帰っておいで
- 野焼き
- 月の乳房
- ヴァルネラビリティー
- フォーチュンクッキー
- 風葬
- みもざ
あとがき"