低山あるき 伊勢田史郎詩集

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 2001年3月、詩画工房から刊行された伊勢田史郎の詩集。カバーは中右瑛。

 

 一九九一年に上梓した『熊野詩集』以降発表した作品から撰んで集録したが、巻頭の「夏も終わるころなので……」と、「烏原」「精霊の寺」は、それ以前の作である。また、配列も恣意的なもので、初出一覧にあるごとく、発表の年代順にはなっていない。
 この十年、身辺には再三再四、大きな波が打ち寄せ、そして引いていった。体調のせいもあるのだが、時折、寂零感に拉がれそうになったりもする。

 常陸なる浪逆の海の玉藻こそ引けば絶えすれあどか絶えせむ

 と、古歌に見える。激しく波が押し寄せ引いてゆく時、玉藻は絶えるだろうが、自分は絶えたりするものか、というのであろう。それほどの強い意志を持っているか、と問われたら、一応は、持っているさ、と応えはするだろうが、内心は何となくあやふやである。
 災難に遭う時には災難に遭うのが良く、病気になる時は病気になるのが良い。死ぬ時には死ぬのが良いのだ。というような言葉を、良寛さんは残しているが、大きな波をかぶった後など、なるほどな、などと納得している。
 巻末に、曲譜「行列」を付した。阪神淡路大震災後に三冊のアンソロジーを同志と語らって上梓したが、この詩集の中から多くの詩が採られて作曲され、各地で演奏された。作曲家の中心となり、大きな流れを形成していかれたのが、兵庫県音楽活動推進会議代表の中西覚さんである。演奏記録をも中西さんは付け加えて下さったが、これは「行列」に関わるもののみである。他にも震災詩が数多く作曲され、多様な形でコンサートが催されて参会者の共感を呼んだ。ちなみに、これらの曲譜は中西さんの手で纏められ、この秋に出版される。
 横須賀時代の石原武さんには、情況と精神が微妙な均衡のなかで絡まりあい引き締めあっている優れた詩集『軍港』がある。中村隆君と、この詩集について語りあった後であったか、神戸・舞子ヴィラの、筧槇二さんや中村光行さんなども参会した席で歓談したものであった。それから、かれこれ三十余年の星霜を私たちは送ったわけだが、その畏友の石原さんに過褒の跋文を寄せていただいた。懐かしく、また有り難いことである。
(「あとがき」より)

 

目次

・夏の終わるころ

  • 夏もおわるころなので……
  • 誰も知らない水場
  • 常隆寺山
  • ときの絵葉書
  • 朱いろの蛇
  • 諸寄
  • 水中花
  • マンサク
  • 椿
  • つつじ
  • 野いちご摘み
  • 昨日の淵
  • 戸隠・凧
  • 戸隠・越水が原
  • 能勢
  • 虚舟
  • 狐火
  • 低山あるき

地震(ない)の日々

  • 光りもの
  • 罹災証明
  • 粉塵
  • 行列
  • 傾斜地の時
  • 地震の痕
  • 蝉の声が
  • 光を負って
  • 霹靂神の午後

・芥川

  • 芥川
  • 白河のほとり
  • うた
  • 春雷
  • 烏原
  • 精霊の寺
  • 志染の岩屋
  • 須佐の入江
  • 仮面の女
  • 彼此のスクリーン
  • 心垢酒徒の唄う

『低山あるき』に寄せる伊勢田史郎の詩風景 石原武
あとがき


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