1988年8月、砂子屋書房から刊行された岩田京子(1937~)の第5詩集。著者は東京生まれ、刊行時の住所は中野区東中野。
この本には、一九七四年出版の詩集『愛時間そして哀しみ』以後の詩を収めた。既発表の詩には、若干、手を入れたものもある。
この空白の十四年間は、病気や退職で落ち着かなかった。書けない時期もあった。また、消毒薬の匂いのする詩は書きたくない、詩は、結局、健康を志向するものだから、とも思い続けた。
言葉への安易な依存、詩の日記的性格、良い子になりたがる悪癖から、まだ自由になっていない。それを知りながら、出版するのは、ハタ迷惑でもある。にもかかわらず、この出版に踏み切ったのは、旧知の詩人たちの訃報がこのところ相次ぎ、自作を未熟と思っても時どき詩集にまとめていくことの大切さを痛感したからである。詩人と呼ばれる以上、最近の詩集を持っていないと困る。
解説の労をとってくださった先進の詩人大江満雄さんに、あつくお礼を申しあげたい。突然送ってきた詩集を四半世紀にわたって保存し、とぎれがちな詩集と詩集とのあいだに一貫性を見いだし、ラフな詩にも長所だけを認めて将来を励まそうとされるご努力は、後進の詩人を育てるという志がなければ、とてもできないことだと、身に沁みて思っている。
(「あとがき」より
目次
- 物語
- 余白
- タベ
- 超高層の下で
- 危急のときに
- 休息船
- 旅へ
- 反逆
- 黄色いカップ
- えんじゅの下で
- 山手通りの秋
- 東中野界隈
- 河
- 窓の風景
- 逃げる
- 扉
- 捨てる
- 洗う
- 喜劇
- 浅間火山測候所で
- 孤独な祝祭
- あいさつ
- 子供の情景1
- 子供の情景2
- 子供の情景3
- ひとについて
- 賞
解說 大江満雄
あとがき