1988年10月、不動工房から刊行された保浦正幸(1949~)の第2詩集。装幀・装画は澤田晴委智郎。著者は愛知県犬山市生まれ、刊行時の住所は名古屋市北区。
子供の引き出しには、錆びたり割れたり欠けたりした物が入っています。役に立たない物ばかりか、それが何なのかさっぱり分からない物も入っています。
しかしそれら一つ一つには、それぞれの思いが込められていて、これは汚ないとか、これは役に立たないとか、これはあぶないとか言って、勝手に整理してしまったら、子供はどんなに嘆き悲しむことでしょう。
私の作品はそのほとんどが少年時代の思い出からなっています。体験したことの他に、聞いたことや見たことも入っています。それらは独り善がりで、何の意味もなく、何の役にも立たず、取るに足らないつまらないことばかりかもしれません。
私の作品は、子供の引き出しの中身とそれど変わらないようです。
新しい作品と古い作品とでは十六年の開きがありますが、作品を書くにあたって私はいつも二つのことを心がけてきました。
むずかしい言葉や表現と、やさしいそれを思いついた時には、できるだけやさしい方を使うこと。
絵の具の代わりに、言葉を使って、一枚の絵を描くつもりで書くこと。
詩を学んで行く道々、様々な誘惑に出合いました。しかしささやかではありましたが、この心がけだけは、一度も忘れたことがありませんでした。
(「あとがき」より)
目次
- 鉱物
- 雛あられ
- 校庭
- 火の見櫓(一)
- 火の見櫓(二)
- 夢のため息
- 私の映画館
- 教科書
- 里帰り
- 自転車に乗って
- 黒い雫
- 形見
- 棺桶木
- イワナの話
- 死んでいた帽子
- 片眼の蝉
- 消息
- 衛士
- 土葬について
- 春の日ざし
- ビー玉
- 遊戯
- みんな 流れて行くね
- 木は 葉をいっぱい広げて
- ぬりえ
- 剣玉
- せう
- 喫茶店にて
- てるてる坊主
- 静かな朝
- 絆
跋 梅田卓夫
あとがき