1967年1月、私家版として刊行された伊達鱓(林浩二郎)の第1詩集。
死んだ魚の眼は、ユウベノママではいない。明ければ、一段と白濁したその眼が、フト、鮮烈な意志力とでもいうべきものを澱ませてしまったぼくの全機能であるような気がしてくる。たちまち、ぼくの大脳が脆弱に反射する。「ボクカラ詩ハグングン選ザカリ、ボクニハ死ガグングン近ヅイテイル」と。
ぼくのイメージと技法の貧困を嫌というほど知り、だが出発しなければならない。ぼくの腐りかけた魚を、何としてでも蘇らせて、海へ放とう。進退谷まったぼくの逆転的凶器のような小怪魚として。しばらくあいだを置いてから、ぼくはメルヴィルの『白鯨』に依る、「白鯨列伝」を書く。ぼくの強引な詩の課題だ。――ぼくがぼくを金縛りにする以外、ぼくには方法がない。
(「あとがき」より)
目次
Ⅰ 卵だけの世界
Ⅱ ジャック
- ジャック
- 事故
- パパと魚釣り
- 銛を持って
- 夢
- 盗人の理論
Ⅲ ITACHI動物園
- 魚の鮮度
- ハト
- サンショウウオの沈黙
- コウモリの悲しみ
- ミミズの出発
- イタチのさいごっぺ
- ヤマイヌの復活
- 足
- アリジゴク
あとがき