1992年12月、青磁社から刊行された芝憲子(1946~)の第6詩集。表紙画は竹田夕絵。著者は東京生まれ、1972年から沖縄県に転居。刊行時の住所は沖縄県那覇市久米。
沖縄に住むようになってから二十年たちました。その前は東京に十年、川崎に十五年いたので、どこよりも沖縄での生活が長くなりました。今年は沖縄の日本復帰二十周年で、式やらイベントやらにぎやかなのですが、わたしは自分自身の二十年をたしかめ、ひとくぎりとするために詩集を出したいと思いました。
「どうして沖縄に?」とよく聞かれました。夫がたまたま沖縄の大学に就職したからです。来たのは復帰の一ヶ月ちょっと前で、パスポートをもち、予防注射をしてきて、ドル紙幣をはじめてさわりました。復帰前後のゆれ動く沖縄が体験できてよかったと思います。
わたしにとって沖縄はなかなか「住めば都」というわけにはいかず、イャなことも多かったのですが、数年に一度、沖縄、東京を往復すると、不思議なことにだんだん自分が沖縄向きになって行くのがわかりました。今では東京に行くと体の波長が合わない、という感じです。かといって沖縄に完全にべったり落ちついたわけでもなく、相かわらず中ぶらりんなのですけれど、このまま行くしかないと思います。
この二十年間で一番楽しかったのは、ロンドンに住んだ一年半で、長い休暇のようでした。また一番大変だったのは昨年でした。三女の心臓手術の少し前、二女が交通事故に会い、次々に入院して心配が絶えませんでした。
作品は主にここ十年間に詩誌やアンソロジーなどに発表したものです。なお「沖縄反戦地主」は、九年前自分の詩のパンフレットで発表したもので、一度詩集という形に入れておきたかったのと、PKO軍によって沖縄が中継基地化する中、反戦地主の方々のことを考えたいという思いもあり、今回そっくり入れました。
(「あとがき」より)
目次
- 絵はがき
- 砂あらし
- 映画が切れた
- 「君が代」が死んだ
- 儀式の木
- 見舞い客
- 風葬の崖
- 日の丸浴場
- スウィート・ルーム
- お召し列車
- 本島市長と紀子さん
- 盃と壁
- 鏡よ鏡
- 午後の陽に
- 鶴に折られて
- 大波
- 月下美人
- 病室で
- はじめてみる
- わすれもの
- 空手
- 魚が笑う
- 沖縄反戦地主
- 1冬の土
- 2奪回
- 3長嶺さんの花
- 4ゾーン'83
- 5嘉手納
- 6砂辺
- 7牛
- 8バラと地球
あとがき