陽叛児 木村雅美詩集

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 1981年3月、横浜詩好会から刊行された木村雅美(1944~2012)の第1詩集。著者は茨城県柿岡生まれ、刊行時の職業は印刷所勤務、住所は横浜市金沢区

 

 何年ぶりかの厳しい寒さである。東北や北陸の雪害はかなりひどいらしい。私の子供達は、屋根まで積もる雪をテレビで見て、羨やましがるが、当地の人にとっては大変な事であろう。イラン・イラク戦争も、金大中問題も、週刊誌やテレビの中でしか、私にとっては生きていない。厳しい論評も素通りして、私の生活は小市民的に穏やかな平和を維持している。しかしそんな生活に何となくいらだちを覚える。かって「詩が生活の全てであり、書けない右手なら切り取ってしまいたい。」と、勇んでいた自分は何処に行ったのだろう。「大人達はわかっていない。」と授業をさぼり、詩を論じあった姿は本当に自分のものだったのだろうか?古い昔の事を思いおこすのは自分が歳をとってきたのかもしれないが、やはり自分の生きざまは、生きざまとして残して考えてみたい。過去を思いおこすことは、古傷を舐めるようで、自分の成長を妨げるものだ。現在は未来のみ考えて生きていかなければ、進歩成長はないと自分にいい聞かせて生活をしてきたが、がむしゃらに働いてきた十数年、今振りかえってみると、何となく虚しさを感じる。そんなある日、新聞で地下水の記事を読み、横浜詩好会のメンバーに参加させていただいた。十数年のプランクは考えていたよりも大きく、ペンを持っても仲々はかどることはない。しかし今、何かをしたい、何かを書きたいという、自分の気持を大切にしたい。
 この詩集は、昭和45年に印刷所送りするまでになっていたものである。今さら昔の自分を裸にするのは恥かしい気もするが、これからの自分を主張する時、過去がおおいかぶさることのないよう、新しい出発をする為のけじめとして発行した。高田さんに書いていただいた解説は、昭和44年頃のものでありびっくりしていると思う、今まで眠らせておいて誠に申しわけなく思っています。この詩集を発行することによって、今までの自分にふんぎりをつけ、詩を愛する人間が新しく生まれたと考えていきたい。そんないみで、この詩集には新しい詩は一切のっていない。当時まとめた詩ばかりであることを、ご諒解いただきたい。
(「あとがき」より) 

 
目次

  • 生活・その断片
  • 無賃乗車
  • 日常雑話
  • 再生
  • わたしは
  • 冬の夜
  • 自殺考
  • おんな
  • おんな・農婦
  • おんな・美しきモデル
  • おんな・女子大生
  • おんな・Y子
  • おんな・S子
  • おんな・K子
  • 街角
  • 滂泥の中

解説 木村雅美断片 高田文夫
解説 男そして「おんな」について 保高一夫

あとがき

 

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