1988年3月、不動工房から刊行された北畠重直の第4詩集。刊行時の著者の住所は三重県度会郡。
「荒地詩集」を読んだのが高校二・三年生の頃であった。地方の高校生としては早熟と言えるが、それは自分が早熟なのではなく早熟な友人が居たからである。
初期のユリイカにギンズバーグの「吠える」の訳を見たのも高校時代であった。
大学の時、エリオットの「荒地」に接した。ギンズバーグの詩集を名古屋丸善の棚に見出す迄十数年かかった。
ロレンス、オーデン、ギヤスコイン、テドヒューズ、イェィッと生噛りした。
日本の詩が新体詩以来西欧の手法を借りなければならなかったのだから仕方が無いと思うが、どうしてこうも欧米詩にエネルギーを費さなければならないのかと疑問に思いはじめたのはまだ数年前である。
隣りの国の挨拶のことばさえ知らないではないか。
過去の三冊の詩集に入れなかったものだけを集めた。これらの詩を否定するためにのみ出版する、というのはつらいことである。陽はとっぷり暮れている。
(「覚書」より)
目次
Ⅰ
- ある位置
- 三枚の絵
- そのひと
- あいのうた
- 四万人の亡霊
- 丘のうえの呪文
- ぼくはでかけた
- 風景
- 駅名のない街が
- 巨石群の孤独
- さかさまに
- 最終バス
Ⅱ
- まんじゅしゃげの咲いているまに
- 山の子らの海辺への遠足の日に
- 病院にて
- 過疎
- きつねつきの唄
- 八月雑記
- 首吊
- 虎
- 秋の虫
- エロス
- 夏二題
- 西遊記
- 橋
- 帰路
- 沖縄
- 他国に住む妹へのセンチメンタルな唄
- 男が玉葱を刻むとき
- 鬱七月
- ひがん花
- わたしがいちばん寒いとき
- 春から夏へ
跋 平光善久
覚書 北畠重直