1994年3月、ふたば工房から刊行された真辺博章(1932~)の第4詩集。表紙は谷脇千世。著者は高知県佐川町生まれ、刊行時の住所は香川県丸亀市、職業は翻訳家。
私は何時の頃からか、鳥の姿態や鳴き声に不可思議な感慨を抱くようになった。白鷺や青鷺が一羽だけ、あの長い足で立ち、首を延ばして、空をじっと見つめて、不動で居る姿には、孤独に耐える誇らしさと高貴さをさえ感じる。又、夕方、隊列をなして飛び去っていく雁の姿を見て、あの鳥たちの旅の行く末を思い、人の生命のあり方や死後の世界に思いを馳せる。この頃では、鳥が天の神への使いのように思われる。いつのまにか、鳥は私の人間としての存在論の媒体となりそうな気配である。
私は、還暦を過ぎ、来し方を振りかえり、行く末を思うにつれて、先立って逝った人のありし日の姿を飛び去った鳥に置きかえて思い起す。このような感傷にひたるのは、まだ早いが、思いが起れば、すぐ筆にして置くべきだろう。
この詩集は、寡作な私の四冊目のものである。作品は、主として、「開花期」、「木馬」、「宙」、「巡」らの詩誌に発表したもので、前述のような理由で、巻頭の題詩「鳥」を詩集名とした。Ⅰの「鳥」の部は、著者の存在論を追求する作品をまとめた。Ⅱの「華麗島」の部は、著者の原体験の地である東台湾の往時の姿である。いつまでも、過去へのこだわりは捨てきれない。
(「あとがき」より)
目次
Ⅰ 鳥
- 鳥
- 幼な児の記憶
- 花暦
- ひも
- 何の手もない
- 破滅型
- 経験
- 紫陽花
- 老父に会いに行く
- 片隅
- 鳥
- 冬のこころ
- 時計
- 宇宙の容器
Ⅱ 華麗島
- 小湊
- 台東山脈
- 別れ
- 夢のなかの風景
あとがき
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