天をあおいで 浜田順二詩集

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 1990年1月、現代社から刊行された浜田順二(1947~)の第1詩集。表紙画は小熊幹。著者は高知県南国市生まれ、刊行時の住所は長野市川中島四ツ屋。

 

 ホトホト長い道のりだった。とは言ってもこの四十年のことではなく、詩集を編もうと思い始めてからの歳月のことだ。
 ”出す、出す”と、外に向かって言い始めてからだって、もう何年が過ぎたのか、自分でもわからなくなった。
 少なく見積っても、五年の歳月はユウに過ぎ去ってしまったろう。なかには、もう出たものとばかり思っている人もいるはずだ。
 これまでに、見知らぬ人から、幾冊かの詩集を送って頂いたりもした。ありがたく、申し訳なく、思ってもいた。
 ともあれ、やっと、生き恥さらして、御礼のまねごとができることで、少しはホッとしている。
 僕は、まさか二十五歳で生まれてきた訳じゃあるまい、とは思うのだけれど、ここに収めたものは、二十五歳頃から、これまでのものとなった。
 これっきりのものだが、これっきりの四十年かと思えば、やっぱり、さびしい。
 やり過ごしてしまったことを、拾いあげた方が、よっぽど気がきいているのではないか、と思ったりしてしまう。
 そうに違いない。きっと。大切なことをやり過ごしたり、見過ごしたりしながら、今日も、生きているような顔をしているのだ。
 四十坂にさしかかって、いよいよ坂道がこたえるようになった。
 いよいよと言えば、ホンにいよいよ明日がどっちだかわからなくなった身の上だが、僕は、相も変らずのスローペースで、これから先は、天に向かって生きて行こう、とだけは、思ったりしている。
 末尾になってしまったけれど、長野に居を構えて以来、文字通り、影になり日向になって、僕らの、苦しみを苦しみ、喜びを喜んでくれた小熊忠二さん。デキの悪いめんどうな男に深夜までつき合ってくれ、さまざまなことを通して、詩を、人間を、いいえ、生きるということ、そのものについて、考えさせてくれたこと、忘れないでしょう。
 多忙を縫って、表紙画を届けてくれた小熊幹さん、はじめ同人「靫」の面々、やわらかあく、激しく、尻、引っぱたいてくれて、ありがとう。
 お会いすることのできた、またできなかった懸命だった諸先輩、見知らぬ人びと、ありがとう。
(「あとがき」より) 

 


目次

プロローグ 星屑
さようなら
ブラック
引越し

空地
ふるさと

熱帯魚
神様がやってこられた
シンデシマッタ景色の中で
火柱

ごめん
赤と黒
歩く
再会
日曜日
帰り道
結論
あきのながあめ
公転
公園
転がる石
拒否
笛の音
サラーム
ひとりの男に
コスモス
四十にして出る
HAPPY birthday to you
エピローグ 狭間の中で

あとがき

 

関連リンク
「晴耕雨読」の夢(下)「畑を始めると、もう一つの時間が流れ出す(毎日新聞)

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