2016年4月、珈笛画廊ほのほから刊行された成瀬政博(1947~)の詩集。装画は成瀬麻紀子。著者は大阪生まれ、刊行時の職業は週刊新潮の表紙絵作家。
はじめて詩を書いたのは、大学闘争のさなかのことで、ルイ・アラゴンの詩集『フランスの起床ラッパ』の影響だったのでしょう、ガリ版で数頁のパンフレットのような詩集を作って、ビラ配りをするみたいに、登校して来る学生たちに手渡したものでした。
それから10年ほどがたって、ぼくは、幼い二人の子供たちと父子生活をしていました。保育所に子供をあずけてサラリーマンをしていたわけですが、保母さんと親との間を行き交いする、連絡ノートというものがあって、ぼくは毎日短い文章を書いていました。そしてそこに、ときどき詩のようなものを書くこともあったのですが、はじめて詩集らしきものを作ったのは、それが元になったものでした
このときから何10年かが過ぎて、ある日、絵かきなっていたぼくに、空から降ってきたみたいに、週刊新潮の表紙絵の依頼があったのでした。それから今までこの仕事が中心の生活をしているのですが、時がたつのは早いもので、もう20年目になります。
ところで、表紙の絵といっしょに「表紙のはなし」という小さな文章も書いていて、ここでもまた詩のようなものを書くことがあります。この2冊目になる詩集『穏やかな一個』は、それが元になっています。詩のことなどふだん考えてはいないぼくが詩集を編もうと思ったのは、それらの詩らしきものがずいぶんたまっていたからでした。
ところが読み直してみたら、そのまま使えそうなものはほんの数編しかないように思えて、この独りよがりには呆れたものでした。結局それを元にしての推敲を何度も繰り返したものがここに収められたものです。ここで予想しなかったことだけど、推敲しながら、ぼくはそれをけっこう楽しんでいるみたいでした。もしかしたらぼくは、詩というものを少しわかり始めたのかもしれませんね。いやいや、これも独りよがりかもしれません。素人の詩のようなものだと自戒しなければなりません。そんな〈ようなもの〉を読んでくださって、ありがとうございました。
そして、最後になりましたが、「珈笛画廊ほのほ」の二見尚子氏、須崎智勇氏には出版に際し、大変お世話になりました。ありがとうございました。また、娘・麻紀子の絵を装画に使わせてもらったこともありがとう。
(「あとがき」より)
目次
- 夢りんご
- あのひと
- ランドセル
- まあだいたい
- 聖家族
- 日鳴日の家族
- お供え
- 薔薇
- めりい めりい
- 春さん
- はるこさん
- ふうせん
- カボチャ
- のぼるくん
- ふんばる
- 生きもの
- 空の下
- 虹
- 深呼吸
- 穴
- わたし
- 恋人たち
- えかきのあいつ
- 手
- 雨の匂い
- 金魚のわたし
- シャボン玉
- 夢
- 草
- 元気でね
- 夏の夜の夢
- 一個
- ごろん
- お月さま
- 水平線
- 風景画
- ミックスジュース
- ベベベルモンド
- 手たち
- 秋の空
- 読書
- 言葉
- 葡萄
- つきのひかり
- ヌボーと
- 夏の終わり
- 鰯雲
- ごきげんさん
- 秋のおしまい
- かぼちゃ
- たくさんのぼく
- 唇
- 手紙
- スウェーデンのおみやげ
- 渡る
- ぼっとさん
- 夕陽m
- 形而上学
- ゆきのさかな
- キリリンさん
- クリスマス
- リアルなサンタ
- 文字がとぶ
- 年賀状
- 富士山
- しゃかむに
- たっぷりとした死
あとがき
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