1966年2月、角川書店から刊行された獅子文六(1893~1969)の随筆集。装幀は杉本健吉。
前の随筆集”町ッ子”以後に書いたものが、だいぶ溜ったので、一本にすることとした。
一番分量の多いのが”愚者の楽園”であるが、これは読売新聞の月曜夕刊に、長いこと、書いたものである。
新聞のコラム風のものを書くのは、最初の経験であり、気も向かなかったのだが、一昨年の正月から昨年の夏まで、とうとう、一年半も書いてしまった。われながら、順応性に富むのを、感心するが、その間の事情は、その項の最終回のところに、書いてある。
そして、この本の題名を”愚者の楽園”としたのは、別に他意はない。分量の点で、代表的だからに、過ぎない。ただ、この標題は、私がつけたものではないことを、断わって置く。”愚者の楽園”は、多分、この連載随筆の最初の執筆者、故三好十郎氏が、名づけたと記憶する。そして、引続き、多くの人が書いたのだが、図らずも、私が最後の執筆者となった。なぜといって、新聞側が、「あの欄は、あなたをもって、終りとします」と、宣告してきたからである。
すると、題名も廃物となったわけで、それなら、記念として、頂戴しようかという気になった。
愚者の楽園。そう悪い題名でもない。それに、あまり賢くない男が、一年半も、そこで遊ばして貰ったのは、明らかな事実である。
(「あとがき」より)
目次
・愚者の楽園
- わが舌
- 日本人は勤勉か
- リキ・アパート
- 聴視料の問題
- ヘンな話
- 帝劇追悼
- ガン恐怖
- 故奥村博史君
- やき芋
- 辰野さんとゴルフ
- 田山花袋
- 日本のチップ
- カブキ役者の赤毛熱
- 当世学生風俗
- テレビの前で
- 箱根山のケンカ
- 高級アパート
- わが家の花
- 小ホテル
- 結婚式下手
- 完全試合
- 黒
- 一日の清遊
- スポーツ紙
- 南方熊楠邸
- 四面ビルもて
- 白人臭
- ケンカしない
- 奇特な職業
- 兄弟ゲンカ
- ハダカ天国
- 大磯自慢
- ドジョウ食わずとも
- 変転
- 鉄斎
- 築地移転
- オリンピック
- 老人の日の感想
- 佐々木邦氏をいたむ
- 新美人
- 高いバー
- 菊
- 庄内米
- 「白鳥の歌」
- 「文化の日」
- ミュージカル初見
- この狂態
- 飛ばし読み
- 糖害
- 湘南線所感
- 新年号
- 門松
- 花柳章太郎の死
- 七十歳も一度
- シングル・タイ
- シェラザアド
- 城南健児!
- 吉原夜話
- 三矢問題
- ヤガラ
- 鐘銭
- 五輪映画
- フルシチョフの写真
- 世紀の恋愛
- 「猫」の初版
- 人道無視
- 京都タワー
- 農地報償
- アフリカ舞踊
- 占領日本製
- 富国他兵
- 食前酒
- 魔術師
- シゴキ
- 京都の寺々
- 真贋問答
- 出楽園
・雑
- 芸術の横行
- 泣き寝入り
- 東京の空
- 子供を教え
- なぜ純潔が大切なのか
- 学生野球というもの
- 正月ぎらい、
- 羽子板
- カルタ会
- 新春放談
- オリンピック開会式
- 常陸宮妃のおじぎ
- サムライ商会の主
- 野村翁を悼む
- 沢田美喜女史
- 一ファンとして
- 渋谷天外君
- 岸田今日子
- 横山泰三個展
- 中村直人君
- 「よみうり寸評」序
- 「田舎医者」序
- 丸善との因縁
- 大道易者
- パリ時代が青春か
- あらたまの球の話
- ロスト・ボール
- わが小唄
- 私の愛する詩文
- 「てんやわんや」
- 「娘と私」
- うまいもの
- 宮中の食事
- 琉球の接近
- 男子の料理
- あのころの正月
- 食物の出世
- ナプキン
- 昔の横浜駅食堂
- 津つ井のオヤジ
- 天政
- 留園
- 年頭の酒
- 酒のサカナ
- 紀州のメモ
- 大分県と私
- 三度目の鹿児島
- フランスの夏
・四季のノート
あとがき
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