ぜぴゅろす 杉山平一詩集

f:id:bookface:20210223100657j:plain

 1977年6月、潮流社から刊行された杉山平一(1914~2012)の詩集。

 

 この詩集を出すおすすめを頂いたのが、永年敬愛した友人田所太郎氏の自決死に心痛めていたときであった。そういえば、彼が、私の作品などほめたこともなかったのに、めずらしく私の「また、いつか、どこかで」という詩ともエッセイともつかぬものを、大新聞に匿名でほめていてくれていたことを思い出し、彼を偲ぶために、詩ではないかもしれないがあれをまぎれこませることによって作ろう、と決心したのだった。そして、小説のつもりで書いても、詩としてしか認めてもらえぬ散文も、この際すこしまぎれ込ませることにした。こういうゴッタ煮は、よくないと知りつつ敢て私はそれをした。
 作品は主に、再刊された『四季』にのせたものだが、巻頭の「孤高」は『夜学生』以後、戦争中の作品で、いかにも気障な気がして『声を限りに』には入れなかったところ、覚えてくれている人があり何故入れなかったといわれ、あらためてこの機会に「解決」とともに入れることにした。昭和一九年という激烈な大戦下の作品としていとおしく、またその気障と若気にもいまは心ひかれたからである。
 そのほか「出合い」「片道切符」「星のように」など甘いのは、ある女子大の学報に、新入生歓迎用として毎年書いていたものだが、学生が詩集に入れるようすすめてくれるのでこれも加えることにした。また丸山薫さんをかいた「夏の別れ」は、ある新聞の広告に頼まれて書いたものだった。
 甘いのがだんだん好きになり、詩集の題名も甘いのにしたかったが仲々よいのがなかった。迷ううちに、さきごろ「図書新聞」に短文を連載することになって、その題名が「ぜぴゅろす」と名づけられた。ラテン語の辞書によるとウエスタン・ブリーズとある。シェリーや立原道造を気取るわけではないが、「そよ風と私」という題名も考えていた私は、これだと思った。潮流社の八木社長も、これでいきましょうといわれ、「図書新聞」の大輪編集長の許しを得て、これを使うことにした。私の住む関西では、西風の吹く日は、おおむね晴天のようである。
(「あとがき」より) 

 
目次

  • 孤高
  • 解決
  • 訪問
  • 問い
  • たゞ一人
  • 不在
  • 出合い
  • 星のように
  • 晩餐
  • 井戸
  • 微笑
  • 小鳥
  • 詩人
  • 純粋
  • 思い
  • 失敗
  • 歩く
  • 片道切符
  • 夏の別れ
  • 空瓶
  • 吠えられる
  • まっしぐらに
  • 私の大阪地理

  • 光三つ
  • 一週間
  • また、いつか、どこかで
  • 星を見る日
  • 追う

あとがき

 

NDLで検索
Amazonで検索
日本の古本屋で検索
ヤフオクで検索