春の曲 木村宙平詩集

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 1980年4月、私家版として刊行された木村宙平の詩集。題字は神保光太郎、装幀は白根光夫。刊行時の著者の住所は横浜市旭区。

 

 昭和十九年の終刊に至る一時期の詩誌「四季」や「四季詩集」(昭和十六年)に会員として接触し、実作に思ひを凝らした日々は遠い昔になったが、今は亡き方々のを含めた同人諸氏の誘掖の下に折々に催された、詩の集ひが懐しい。
 著者は大正五年本籍地の熊本市薬園町に當時酒肆を営む父喜三郎、母修の次男繁喜として出生、地もとの高校を経て昭和十年に初めて上京した。高名な「月に吠える」の詩人を尋ねて、学生仲間と講演の依頼に出向いたりした昭和十二、三年の頃詩の投稿を始め、月々の雑誌の配送を待ち望む張りのある日を過した。
 右記「四季詩集」の編者は、つい去年、豊橋で他界されてまだ日も浅いが、白に残念なことである。
 嘗て、これらの詩草をひと区切り、纏めてみようと思ひ立ってから随分と久しい。たが、忽忽に季節をめぐらす、歳月の流れに運ばれながら、時に波のうねりの様に想ひの高まることもあり、詩ごころは不断に私の半生を支へてきて呉れたものと回顧される。
 この書を捧げる両親への思慕も恒に変ることが無い。片や「芳薫」と呼んだ銘の酒造り、片や醤油を醸す、何れも商鋪の、三男坊と末娘で、又平常書物に親しむ風とてなかったが、わが心身ともに被與のものであるし、この独吟の情感もその許に通点かと思ふ。
 収める作品の大体は、前記の上京の時から昭和四十年頃迄のものである。律の暢達を欠き、興の至らざるも亦、生得のものであるが、わが庭に散り敷いた椎の枯葉を掻き寄せるに似た心地で、故に「春の曲」一集を刊行する。(「あとがき」より) 

 
目次

序詩

  • 富士に
  • 雪晴
  • 婦人像
  • 神域
  • 海邊墓地
  • 故里の湖
  • 新宿寒宵
  • 海景
  • わたつみ
  • 阿里山
  • 星辰
  • わが過ぎゆける
  • 陸地多彩
  • 春と櫻
  • 海の静寂に
  • 坪井川
  • 行路情景
  • 遠景
  • 春の曲
  • 朱門
  • 私の湖
  • 北のオーロラ
  • ドォル
  • ドゥオモ
  • アルノの都
  • 夢の園
  • 豊肥境
  • 野芳
  • 夜の歌


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