イーサルミの石 篁久美子詩集

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 1990年10月、土曜美術社から刊行された篁久美子の第2詩集。装幀は居島春生。新世代詩人叢書3。

 

 <答え>は恐い。<答え>出したさに奔走する人もいるが、<答え>が出てしまうというのもある意味では恐いことである。
 人の一生への評価は大方その人の死後になされる。人によっては千年二千年の後、或いはもっと後になってもいわゆる<正解>が出ず、何度も問い直されることがある。羨ましいことに彼らは終わらないのである。だが並の人ならば高々五十年で一応の<答え>を出されて終わり、忘れ去られてゆく。
 人類についてはどうか。終末論を振りかざすつもりはないが、「ぼくだけはいつまでも死なないよ。」と言う子供のように、未だ幼い人類が「我々だけは存続できる。」と思い込んでいるとしたら、甘いと言わざるを得ない。とすると、私たちがこの惑星に棲息していたことへの<答え>は一体誰(何)が出すのだろう。想像するべくもないがただ一つ確かなのは、私たちが絶えた後、少なくともヒトの時代が終わった後、それが出されるだろうということだ。
 <答え>は様々な終末を意味するのである。
 ところでこの第二詩集はもちろん<答え>ではなく、<問い>である。作品は主に一九八八年~一九九〇年にかけてのもので、『ラ・メール』の公募等に入選した作品、『詩と思想』、『一九九〇年詩集』、『続・現代地名詩集』などに収録されたものに、書き下しを加えてある。第一詩集『四月の魚』では、至近距離から宇宙の果てにまでモチーフのバラつきがあったので、今回はなるべく中距離のものも揃えたつもりである。叶うならば、良きにつけ悪しきにつけ、問われ続けたい。
(「あとがき」より) 

 
目次

Ⅰ 光を抱く全てのものたちに

<非ユークリッド的な蠅の飛翔に気をとられている男の顔>の為に

  • 赫い森
  • イーサルミの石

<スペインの庭の夜>から

  • Andante――歩く速さで
  • 螺旋怪談
  • スープ
  • 光の領域へ
  • ロプ・ノールからココ・ノールヘ
  • イルカだった時
  • 言の葉の森で


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