屋根の上のシーサー 比嘉辰夫詩集

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 1989年3月、西田書店から刊行された比嘉辰夫(1953~)の詩集。カバーは戸井昌造。著者は沖縄生まれ。

 

 ほくの書き散らした作品の中から自分にうしろめたさを感じさせてくれる内容のものだけを選んでこの一冊を編みました。わざわざそうした一冊をつくったのは、一九八四年から一九八八年にかけて集中的に書くことをすすめてくれた友人たちへの、言葉にしがたい返礼を盛り込んでおきたかったからなのです。沖縄で生まれ育ったぼくにとっての不安(揺れつづける不安)を、友人たちにしっかりと伝えたいと考えました。
 沖縄の人々の日常生活の大気のなかにある微細な塵芥のような「現在に影を落とす(留まる)過去への郷愁」――そこにひどく暗示的な地方的前景のひみつが隠されているように、ぼくには思われ、それに表現を与える努力をしました。ぼくの想いを友人たちに伝えるには、この直感を詩的形式でつかむほかありませんでした。ぼくの心に浮かんできたことごとくのものは根っこからではなく、その根っこを揺るがす中心の近くから常に生まれてきたのです。またとないさまざまな特徴をもった、ある過ぎ去った世界について語ることは、もう、ひどく困難な世代にぼくは属しています。しかし、多くの人々に共有される「苦難を内化した文化」として、それらを結晶化できないだろうかとぼくは考えつづけています。
 ここに収めた作品の発表の機会をつくってくれた詩誌「アウラ」の寺田節夫氏をはじめ、同人の吉野新二、松原立子、酒井美恵子、一瀬なおみ等の各氏の友情に深く感謝しています。かれら年上の詩人たちの批評眼と出会わなければ、こんな一冊をものすることはなかったろうと、いま考えています。
(「あとがき」より) 

 
目次

Ⅰ先島

  • 詩に言葉
  • 海のトンネル
  • うみゆらゆら
  • 忘れるな
  • 商売
  • 風の子
  • 人知れぬもの
  • 悲しい日没
  • 野菜畑
  • 渇望
  • 生まれ
  • しおれた花
  • ぼくの一日
  • 青瀞のあやぐ二篇
  •  水鏡
  •  放浪者
  • 途方にくれて

Ⅱ沖縄島

  • 音楽寺の門
  • 声の奥を走る
  • 震源
  • 夜の歌
  • 天願橋
  • 水国のあやぐ
  •  フリーズ
  •  野草の眼
  •  炎に揺れる
  • マングース
  • ハブ
  • シーサー
  • ブナガヤ
  • 衝撃

附録
 短章集
闇路Ⅰ
  Ⅱ
  Ⅲ

あとがき


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