2005年3月、ふらんす堂から刊行された小笠原眞(1956~)の詩集。装幀は君嶋真理子。
前詩集で、折句を仕込んだ五行、七行、五行の定型詩集を試みた勢いもあって、今回は定型詩集の王道、ソネットに挑戦してみた。三行二連、四行二連の組み合わせによる十四行詩であるが、力量不足もあって頭韻、脚韻等の押韻は最初から完全に断念した。これも言い訳に過ぎないのだが、日本語の複雑性が災いしてか、単純明快な横文字と比較して、視覚的にも聴覚的にも日本語による押韻定型詩には相当無理があるように思われたからだ。従って、詩行に内在する詩的リズムがあれば、それでよしと独り決めしたのである。
申年生まれの私は、今年四度目の年男に相成り、歳の数だけの蝋燭ではないが、全部で四十八篇とした。ほとんどがここ一年間に書き溜めたものであるが、通読してみればリリカルなソネットにそぐわないコミカルな自分詩となってしまった感がある。また、定型詩それ自体がもともと遊びの精神を内在している訳であるが、外面的にも完全に遊戯的な詩や、視覚詩も織り交ぜて編集した。それというのも詩とは言語を用いた総合的芸術だと単純に理解しているから、今回は視覚や聴覚も総動員してみようとこれまた単純に考えたまでのことである。
前詩集を上梓した後、相次いで義理の母と父が亡くなった。共稼ぎだった私たちは、お二人に大変世話になった。特にふたりの息子たちは彼らに育ててもらったといっても過言ではない。お二人のご冥福を祈るとともに、天国のお二人にこの詩集を捧げたいと思う。
(「あとがき」より)
目次
- 記憶力
- 水難の相
- 波
- 祖父のタオル
- 詩作することの喜び
- 田園の受精卵
- 初めての自転車
- 決關
- 私の勉強部屋
- 屋号
- 比較言語学
- モグラが十五匹
- いつの間にか女房役に
- エキスポ70
- でかい足
- 静物L
- 新入生クラブ説明会
- ニトログリセリン舌下錠
- 下宿の小母さんの弁当
- 隼の哲
- フラッシュバック
- 夏の十和田湖は霧雨だった
- 旅館
- 春の岬
- 一人旅
- 人間の一生
- 詩の投稿
- バイクと星空
- コンタクト混濁
- 働けることの喜び
- 詐欺師的人々とのお付き合い
- 英会話のお勉強
- 田沢湖の真ん中で
- 結婚の挨拶
- 初めてのリング
- ドイツのフォーク
- 雪原
- 迷子になる母
- 母の健康グッズ
- 四個のダイス
- 義理の母
- 人生における幸せの量
- 義父の職業
- 漢字バラバラ事件
- 私の病歴
- 喫煙と禁煙
- 極楽鳥の鳩顔
- ラジオ体操
あとがき