1970年12月、光風社から刊行された秋吉久紀夫(1930~)の第2詩集。装幀は本川真木。著者は中国文学者。
第一詩集「南方ふぐのうた」を出版したのが一九六一年二月だったから、この第二詩集「天敵」は、ほぼ十年目ということになります。樹木も十年たてば、どうやら見やすいものにもなるものですが、こちらの方はなかなか切ればただちに鮮かな樹液の匂いがたちこめるというわけにもゆきません。
ただわたしとしましては、どこか根源的なものが根こそぎになでぎりにされてしまっている感じのするなかで、ただ一つ、人間がたがいにほんとのことばを交し合うことによって、生きることに対して力づけあうという、このことが、どんなに大切なことであり、またそのためにこそどんなにむずかしいことであるか、じっくりと考えて来たつもりです。
でもいまこの第二詩集「天敵」を上梓するにあたって、改めて肝心なことを反芻しています。
そして同時に、その肝心なことを貫ぬくためのプログラムをも、さらに自分で肉体化せざるをえまいなどと、野放図な考えにひたっています。
(「あとがき」より)
目次
Ⅰ
- 聞えなくなったぼくらの聴覚
- ME――200
- ゴーレス人
- 日本本土の恋人たちよ
Ⅱ
Ⅲ
- 天敵
- もぐらの決意
- 氾濫期
- 錨を投げろ
- 外来種
Ⅳ
- 八月の人民公社
- 太陽
- 国境
- 雨花台の小石
Ⅴ
- どこかで
- なめ茸
- のっぺらぽうのかお
- いかれたあんちゃんへ
- 脱皮
あとがき