2011年11月、砂子屋書房から刊行された前田康子(1966~)の第4歌集。装幀は倉本修。塔21世紀叢書193篇。日本歌人クラブ近畿ブロック優良歌集賞受賞作品。刊行時の著者の住所は京都市左京区。
二〇〇六年から二〇一一年までの作品を編み第四歌集としました。こうやってまとめてみると、好きなものばかりを詠んでいるという気もします。大きな地図のなかをちょこちょこと狭く動いている自分が見えて来ます。
子育てに追われていた時期も過ぎ、ふたりの子供も十七歳、十三歳となり思春期真っ只中です。自分のその頃とくらべると、私はもっと閉じこもっていて、捻くれていたから、少々のことがあっても私よりもましと言い聞かせています。
二年間ほど、アラビア語を習っていたのでその歌が混じっています。難しくてあまり身につかなかったのですが、イスラムの文化や生活を身近に学ぶことができ楽しかったです。
タイトルの『黄あやめの頃』の黄あやめは、本当は黄菖蒲と呼ぶ黄色い花のことで、五月から六月ごろ水辺に咲きます。近くの松ヶ崎という場所に小さな湿地があり、黄あやめが咲きます。毎年見ていると、黄あやめの花が好きというより、咲いているときの周りの空気が好きだということに気付きました。つきつめていくと夏至あたりの張り詰めたような時間が、静かで怖いようで好きなのかもしれません。
(「あとがき」より)
目次
Ⅰ
- もめんのように
- 私が遠い
- 樹になる日まで
- 菊の花首
- UFO日和
- ムスリムに会う前
- ぼんやり顔の犬
- ゆでたまご色
- 商人のような
- うずら塾
- アリメツ
- 骨なきこと
- 無音なり
- 秋の尾
- 咲いた分だけ
- 春風
- きょどきょどと
- 存在感ある雲
- 秋草地図
- 私と薊
- からすうり
- 比良山
Ⅱ
- 私の春
- 糸蜘蛛
- 兵士めきたる
- たんぽぽコーヒー
- 答案
- おおづかみの雲
- 男の料理
- 青ナイル白ナイル
- 栂尾(とがのお)
- はたいてしまう
- 姫小判草
- 和薄荷
- 小さき頭
- 牛蒡のちから
- 平凡に泣く
- 海の色の日傘
- 骨盤で
- ポンチョ着て
- 出来損ないの弟のように
- 海鳥
- 黄あやめの頃
あとがき
NDLで検索
Amazonで検索
日本の古本屋で検索
ヤフオクで検索