1971年4月、昭森社から刊行された浜田遺太郎(1918~1968)の遺稿詩集。編集は浜田富子。歌人・浜田到のペンネーム。
浜田遺太郎がこういう形で作品を世に残すことを考えたことがあったかどうか知らない。
どういう形であれ、遺太郎の作品群は生き残るであろうし、それなら生き残るにふさわしい装いを、とり残された者共の手で整えねばならない。
未亡人を中心に、児玉達雄、羽島さち、井上岩夫がおりおり話し合い、歌集「架橋」出版後半歳にして漸く詩集は出版の事務的段階に持ちこまれた。
たまたま帰郷中の黒田三郎氏にこの企画を明かし、協力をお願いしたところ、編集・装幀等への助言はもとより、昭森社との事務的折衝一切を引き受けてくださった。氏の協力がなければ、この詩集は別の形で、もっと遅れて世に出ることになったに違いない。月並な謝辞では尽くせない思いである。
編集の骨組は、詩稿第17浜田遺太郎特集号で、児玉達雄が示した方針を踏襲した。即ち作品「Ⅰ」は生前どこか(主に「詩学」)に発表した作品、「Ⅱ」は遺された五冊の大学ノートの中で比較的整理された一冊から、「Ⅲ」は残りの四冊から、夫々完結したものと思われる作品を選んだ。
これら作品群の他に「神の果実」「血と樹液」「隠者の暁」等、アフォリズム風のエッセイがあるが、これらは浜田到の本名で出した前著「架橋」に収められているので、併せ読まれることをお願いする。
尚、作品のカナ使いは新旧いりまじっているが発表当時の原文のままとした。故人の年譜も「架橋」に詳しいので、ここでは再録を避けた。最後になったが、架橋に続いてこの詩集に二枚のデッサンを下さった前畑省三氏に厚くお礼を申し上げる。
(「後記」より)
目次
Ⅰ
- わかれに
- 低い声
- 背景
- 機械
- 隠者
- 火の髪
- 星の鋲
- 耳の空に
- あなたの果てしない頷きの前で
- 少女
- 太陽を西へ
- 蒼ざめた貌について
- 深夜の薔薇
Ⅱ
- 何処に
- 手の蔭に
- アフォリスメン
- それだのに今は、
- 予感する夜に
- 少女
- 夜明け
- 少女
- 戒律
- 女に 或いは夜に
- 影
- いなづま (或いは詩)
- 運悪く
- 蠟燭
- 光が
- 地球が廻っている
- 闇
- 雨
- 形
- 夕陽の時
- つぎの夜
- 球体の夢
- 橋
- COSMOS
- 蠟燭
- 愛から死んだひとたちが
- お前の海は
- あなたのながい瞼の下で
- 虫
- 若し あめつちから
- ひとりではない
- くうき
- ひと日のつとめが
- 手
- 動物園にて
後記