1985年4月、詩学社から刊行された香川紘子(1935~)の第6詩集。装幀は井上リラ。著者は姫路市生まれ、刊行時の著者の住所は松山市。
ここに『朝と共に』(一九八〇年)以降の作品、三十編を集めて第六詩集を編んだ。
Ⅰは、芸術と自然をめぐっての自由なイマジネーションの旅を、Ⅱは絵画によせたものを、Ⅲは私をとりまく人間関係、なかでも家族との絆をテーマにした詩を中心に集めた。
これらの詩編の背景となった私の四十代後半は、比較的平穏な時期だったということができそうである。そうしたなかで今も心に深く残っているのは、父の七回忌の法要のため、三十七年ぶりで故郷の広島を再訪した日のことである。生家跡の路地で遊んでいる子供たちにダブって少年時代の父の面影が浮び、菩提寺のきざはしを上り下りしただろう祖母の姿が私の胸に熱く甦ってきた。それはまた、私にとってアイディンティティを確認するための旅でもあった。そうした思いをこめて、『帰郷』を詩集のタイトルとした。
(「あとがき」より)
目次
Ⅰ
Ⅱ
Ⅲ
- やさしい算数
- 鯉幟り
- 電話
- 節分今昔
- 帰郷
- 交信
- 背中
- 指先で聴く
- ホスピス訪問
- 母の見た夢(一)
- 母の見た夢(二)
あとがき