1964年10月、思潮社から刊行された嶋岡晨(1932~)の詩集。
前詩集以後、この三年ばかりの間にたまった作品群を整理し選び出し、詩集名を「永久運動」とした。私の仕事は、現代が排泄するニヒリズムの濁流の中を、彼岸へ泳ぎわたろうとする意識の永久運動である。
主として「詩学」「現代詩手帖」「現代詩」のほか、「近代文学」「世界像」「新詩篇」「獏」「漕役囚」に発表した作品である。
Ⅰは、十余年の東京生活にサヨナラし郷里にひっこんだ或る抵抗感情が軸になっている。Ⅱは、時代のもたらす虚無感と自己の存在の場との噛みあいの確認である。Ⅲは、Ⅱのより現実的な考察として対象をせまく限っている。Ⅳは、悪書追放のうきめにあったある雑誌に発表した一連の作品だが、作者としてはマジメな愛の唄のつもりである。Ⅴは、アシカに托した、小市民の自虐的な生活感情を諷刺的詠嘆的に表現した数篇の作品を、放送の必要から一本にまとめ再構成したもの。真家ユリ子氏の演出で一九六三年一月、NHKから電波に乗せた。終りの著作目録は私流のこれまでの悪業のザンゲである。
今、自分の中の詩の世界が形を変えて、散文的な世界に移行していくけはいが感じられる。あるいは、これが私の最後の詩集になるかもしれない。出版に当って協力を仰いだ小田久郎氏に謝意を表したい。
(「あとがき」より)
目次
Ⅰ
- ふるさとに帰ろう
- 訣別
- 地方帰住者の思想
- 足摺岬
- 竜串
Ⅱ
- 生活する機械
- 世界の雨季に
- ¥三〇〇で生きた兎を買い座敷で子供とあそばせながら作る詩
- おもちゃの牝牛とほんものの二十日鼠との関係についてなにも考えない詩
- 慢性機能障害のロボット・オルフェウス64が倒れながら書く詩
- 永久運動
Ⅲ
- 夢幻家族
- 人喰人種
- 黒い山羊のいる風景
- 磯釣
- 闘犬
- サンドバッグ
- 象の不安
- 脱皮
- 肉片
Ⅳ
- 蛇
- 鳥
- 山猫
- 砂時計
- 豹
- 墓石
- 魚
- 裂ける
- 叫ぶ
- 液体
Ⅴ
- あしかの唄
嶋岡晨著作目録
あとがき