1996年7月、あざみ書房から刊行された香川紘子(1935~)の第4詩集。扉写真は神山恭昭。第4回丸山薫賞受賞作品。
ここに、「詩学」「gui」「言葉」「愛媛総合文化祭・現代詩大会作品集」に載せたものを中心に二十八篇を集めた。
前詩集『幸福の尺度』の詩稿の清書をしてくれながら、「これが私が手伝ってあげられる最後の詩集と思う」と、洩らした母の言葉が不幸にも的中してしまった。母の老いと病と死をめぐって私の環境も激変し、二年前から次兄の病院の一室で暮らすようになった。この詩集のⅠに集めた詩には、その間の事情を反映したものが多い。
父亡き後の十八年間、重度障害者の私との二人三脚に命を燃焼し尽くして逝った母の一周忌に手向ける、私からのささやかな花束として、この『DNAのパスポート』を編んだ。ただ、そうした私の思い入れとは別に、この詩集を編集してゆく過程で次第に見えてきたものがあった。それは、母とか私とかいった極めてプライベートな関係を越えた、大きな時の流れの中での出会いと別れであった。
(「あとがき」より)
目次
Ⅰ
Ⅱ
Ⅲ
- ダリの彫刻展から
- 時間のプロフィール
- 抽き出しのあるヴィーナス
- 夏の思い出
- 終末論
- 沖縄連作
- 一 西海パノラマ
- 二 摩文仁の丘
- 三 沖縄の海にさわった
- 四 熱帯ドリームセンター
- 神のメジャー白川議員「南極大陸」展
- DNAのパスポート
あとがき