2020年7月、ミッドナイト・プレスから刊行された岡田幸文(1950~2019)の第3(遺稿)詩集。著者は京都生まれ、東京育ち。元ミッドナイト・プレス社主。
『そして君と歩いていく』は、岡田幸文の第三詩集となります。『あなたと肩をならべて』『アフターダンス』をまとめて以来、約三十年の月日が流れています。この間、詩のそばで生きながらも、詩を書くことはありませんでした(個人誌「冬に花を探し、夏に雪を探せ。」を出すことになった理由の一つは、詩を書きたくなったからだと言っていました)。詩を書かなかった日々、岡田は、すぐれた一篇の詩を世に伝える「仕事」をひたすら続けていたように思います。
「詩の新聞midnightpress」の編集後記には、イタリアの詩人、ウンガレッティの言葉を紹介している箇所があります。
「まさに詩だけが――私はそれを恐ろしいまでに学び取ってきた、そして、身に沁みて知っている―――わずかに詩だけが、どれほどの悲惨が押し寄せてきても、自然が理性を支配しても、人間がおのれの作品をかえりみなくなり、たとえ《元素》の海に漂っていると誰もが気づいたときにも、まさに詩だけが、人間を回復できるのだ」
そして、岡田の言葉は次のように終わっています。「こういう応答、練り直しこそ、詩のそばで語り、そして生きることだろう。」と。
この詩集のタイトルは、共に生きた、同志でもある私への岡田の言葉です。これからも、詩のそばで、共に歩いていきたいと思います。
(「あとがきにかえて/山本かずこ」より)
目次
- エニグマの像
- 歌降町
- 冬のシャンソ
- 夜のメロディー
- どこへ
- 京都4
- 京都5
- 一九九〇年秋、新宿
- 春歌1
- 春歌2
- 最後の夜
- 前夜
- 思い出
- 一九九九年一月十一日、数寄屋橋を往く
- 夜の歌
- 一九九二年のリバー・ガレージ・ギグ
- マダム・シルクのブラームス
- 理由のない理由を尋ねる
- 旅
- 僕らは歩いた
- 港にて
- 八月の恋、あるいは…
- 六月の路上
- 夏の風
- 見る前に跳べ――内澤睦男に
- 酒宴
- ものたち
- 速度の思考
- 第二章
- 川の思い出
- 偶作
- Remember
- 川に沿うて
- 海の思い出
- pseudoblues, 1979
- 土堤の論理
- 蝉の、別れの
- オリエントの夕日
- 無題のアリア――(creatio ex nihilo〉のための
あとがきにかえて