2017年9月、土曜美術社出版販売から刊行された一瀬なほみ(1953~)の第2詩集。カバー装画は吉丸杏、装幀は直井和夫。刊行時の著者の住所は山梨県韮崎市。
谷川俊太郎の本『風穴をあける』の中で、「料理女がサラダにレモンの切れはしを絞るように、詩人はときどき自分の心を絞るのだ」(チェコスロバキアの作家ミラン・クンデラ)という言葉に出会い、わたしのことを言い当てられているように感じました。
絞って書くことによって生きてこれているように思います。けれども、絞りきってしまったら生きられないような気がします。自分の心なのに、いちばん奥には触れられず、少し手前のところで行ったり来たりしているようなのです。
”才能は無いほうがいいんだよ、才能ある人ってやめちゃうんだよね、無い人のほうがコツコツ続けていく”、”小説は修行だけど詩はどこまでも感性だからね””書いていればいいことあるよ”……阿部岩夫さんの、三十年ほど前の言葉です。私が書き続けていけるように言って下さったのだなあと、今、しみじみ思います。やり直しができないこともあるということを知ってしまったとしても、私たちはその日が来るまで歩きつづけなければなりません。出口に向かって、あるいは入り口に向かって...。
第一詩集『階段が消える』を出してから、気づけば三十年経っていました。亡き阿部岩夫さんに感謝の気持ちを込めて、今日までの道のりを著します。
(「あとがき」より)
目次
・東京編
- 入り口と出口のあいだで
- 嗅ぎあるく
- 水で洗う
- たまごを食べる
- からだが、変わった
・山梨編
- ここには……
- 保育園では
- 子どもたちが
- 独楽のとなりで
- 花占い
- ドン・ドラキュラ
- あるけない
- 桜の木のもとで
- アトムと心
- わたしと青年
- 歩く
- 電波塔の先端が……
- チェルノブイリの声
- 今まで知らなくてごめんなさい
- ひとりでいってしまった佑人へ
- その先に……
- 紙ひこうき
- 未完の話
- 「予告犯」の青山祐一
あとがき