2022年7月、イースト・プレスから刊行された斎藤真理子(1960~)の評論集。
目次
まえがき
第1章 キム・ジヨンが私たちにくれたもの
- 『82年生まれ、キム・ジヨン』の降臨
- キム・ジヨンは何を描いていたか
- みんなの思いが引き出されていく
- 「顔のない」主人公
- キム・ジヨン以前のフェミニズム文学のベストセラー
- 大韓民国を支える男女の契約、徴兵制
- 冷戦構造の置き土産
- キム・ジヨンのもたらしたもの
第2章 セウォル号以後文学とキャンドル革命
- 社会の矛盾が一隻の船に集中した
- 止まった時間を描く──キム・エラン「立冬」
- キャンドル革命に立ち会う──ファン・ジョンウン『ディディの傘』
- 当事者の前で、寡黙で
- 傾いた船を降りて
- 無念の死に贈る鎮魂の執念
第3章 IMF危機という未曾有の体験
- IMF危機とは何か
- 危機の予兆──チョン・イヒョン「三豊百貨店」
- IMF危機が家族を変えた──キム・エラン「走れ、オヤジ殿」
- 「何でもない人」たちの風景──ファン・ジョンウン「誰が」
- 生き延びるための野球術
- セウォル号はIMF危機の答え合わせ
第4章 光州事件は生きている
- 五・一八を振り返る
- 光州事件はなぜ生きているか
- 詩に描かれた光州事件
- 体験者による小説
- 決定版の小説、ハン・ガン『少年が来る』
- 遺体安置所の少年
- 死者の声と悪夢体験
- 死を殺してきた韓国現代史
- 『少年が来る』は世界に開かれている
- アディーチェの作品との類似性
- さらに先を考えつづけるパク・ソルメ
- 歴史の中で立ち返る場所
第5章 維新の時代と『こびとが打ち上げた小さなボール』
- 「維新の時代」が書かせたベストセラー
- タルトンネの人々
- 都市開発と撤去民の歴史
- 『こびと』は一つのゲリラ部隊
- 物語を伝達する驚くべき構成
- 若者たちの心の声が響いてくる
- 生き延びた『こびと』
- 石牟礼道子とチョ・セヒ
- 興南から水俣へ、また仁川へ
- 『こびと』が今日の日本に伝えること
第6章 「分断文学」の代表『広場』
- 「分断文学」というジャンル
- 朝鮮戦争と「釈放捕虜」
- 南にも北にも居場所がない
- 批評性と抒情性溢れる『広場』
- 四・一九学生革命がそれを可能にした
- 韓国文学に表れた「選択」というテーマ
- 堀田善衛の『広場の孤独』
- 絶対支持か、決死反対か
- 終わらない広場
- そして、日本で終わっていないものとは
第7章 朝鮮戦争は韓国文学の背骨である
- 文学の背骨に溶け込んだ戦争
- 苛烈な地上戦と「避難・虐殺・占領」
- イデオロギー戦争の傷跡
- 朝鮮戦争を六・二五と呼ぶ理由
- 金聖七が見た占領下のソウル
- 廉想渉『驟雨』の衝撃
- したたかに生き延びる人々
- 自粛なき戦争小説
- 望郷の念を描く自由がない──失郷民作家たち
- 韓国社会を見すえる失郷民のまなざし
- 子供の目がとらえた戦争──尹興吉『長雨』
- 戦争の中で大人になる──朴婉緒の自伝的小説
- 私にはこれを書く責任がある
- 文学史上の三十八度戦
- 越北・拉北文学者の悲劇
- 日本がもし分割されていたら
- パク・ミンギュも失郷民の子孫
- ファン・ジョンウンの描くおばあさんたち
- なぜ朝鮮戦争に無関心だったのか
- 世界最後の休戦国
第8章 「解放空間」を生きた文学者たち
- 一九四五年に出現した「解放空間」
- 李泰俊の「解放前夜」
- 「親日行為」の重さ──蔡萬植「民族の罪人」
- 中野重治の「村の家」と「民族の罪人」
- 済州島四・三事件
- 終わりなきトラウマ──玄基栄「順伊おばさん」
- 趙廷來の大河小説『太白山脈』
- パルチザンという人々
- 次世代に受け継がれる仕事
終章 ある日本の小説を読み直しながら
- あまりにも有名な青春小説『されど われらが日々──』
- 朝鮮戦争をめぐって激しく論争する高校生たち
- ロクタル管に映った朝鮮戦争
- 朝鮮戦争の記憶はどこへ
- 「特需」という恥
- 十代、二十代の目に残った朝鮮戦争
- なぜ韓国の小説に惹かれるのか
- 傷だらけの歴史と自分を修復しながら生きる
- 韓国の文芸評論家が読む『されど われらが日々──』
- 時代の限界に全身でぶつかろうとする人々の物語
- 良い小説は価値ある失敗の記録
あとがき
本書関連年表
本書で取り上げた文学作品
主要参考文献