2008年4月、童話屋から刊行された石垣りん(1920~2004)の詩集。編集は田中和雄。
石垣りんさんが五冊目の詩集を作りたい、とつよく願われたのは、亡くなる半年前でした。すでに肺癌に冒され、心筋梗塞で倒れるなど入退院をくり返していました。雪谷の自宅に帰るたびに、不自由なからだで未刊詩を探し、なんとか十編ほどは見つけて送ってくださいました。
そして亡くなる一ヶ月前、弟の利治さんが入所している東京杉並の浴風園に、念願かなって入園され、離ればなれだった弟さんと一緒の暮らしができるという夢が実現したのでした。この夢をかなえるために、谷川俊太郎さんと茨木のり子さんが、知恵をしぼり親身に心をくだかれました。
ふだんはもの静かなりんさんは、このときばかりは人目もはばからず、利治さんの手をとりしっかり抱き合いました。ふたりは、昔どおりの仲
よしの姉弟にもどった子どものようでした。利治さんは新しい詩集の話を喜び、「早く見たいな、いつ出来るの」となんどもお聞きになりました。
八四年の生涯を複雑な家庭環境のなかで寂しく送ったりんさんは、亡くなるまでの一ヶ月間を、利治さんとの姉弟愛という至福のうちに過ごし、二〇〇四年十二月二十六日早朝、安心したように永眠されました。
(「あとがき/田中和雄」より)
目次
- レモンとねずみ
- 契
- 春
- 虹
- パラソル
- たんぽぽ
- 恋人
- なのはな
- なかよし
- シコタマ節
- すべては欲しいものばかり
- ゆりかごのうた
- 鍋のスープ
- 洗う
- 夜の道
- 母の景色
- ランドセル
- まだ熟れない
- 居眠り
- たね
- 波
- 夏みかん
- 赤い紙の思い出
- やさしさ
- まぶたの下に
- 若者
- 年を越える
- ゆたんぽ
- いじわるの詩
- 私の日記
- 夜の詩
- 枯葉
- 墓
- 声
- 贈り物
- 風
- かなしみ
- 沈んでいる
- 二月のあかり
- 脊椎の水
あとがき