2005年6月、夢人館から刊行された伊藤啓子(1956~)の第3詩集。写真は新関昭男、装幀は直井和夫。刊行時の著者の住所は山形市。
会合に出ると年配者から「若い人、こちらへ」と手招きされる。会が終わり椅子片付けなどしていると「やります」と若者たちから労わられる。四十代はおもしろい。時に応じて、老いと若さの狭間でふわふわしていられる。少女のようにはにかむじぶんと、オニババの笑いを浮かべるじぶんが交互に顔を出す。
年を重ねるたびに、季節の移ろいに敏感になっていく。さらさらと月日が流れていくさまを、四十代最後の年にまとめたいと思った。初夏(はつなつ)という言葉が好きである。今までの詩集は、どれもこの時期に発行している。今回も、山々があざやかな緑色に染まる、一年で一番好きなこの季節に出すことができた。
(「あとがき」より)
目次
1
- 余熱
- 鬼子
- 触覚
- さくら
- 春に遅れて
- ひつじの眠り
- 夜の声
2
- 鬼子
- 夏草
- 馬肉
- 昼の物語
- 休日
- 涙谷
- 夏のお薬会
- 夏の飲み物
3
- 本読み
- 絵日記
- 標本
- 夕暮れに
- なみだ
- 川のほとり
- 木こり
- 空を見上げる
- 冬の鬼灯
あとがき