2007年1月、編集工房ノアから刊行された神田さよの第4詩集。装幀は森本良成。著者は東京生まれ、1972年から関西在住。刊行時の住所は西宮市。
前詩集『ハーフコートをはおって』から七年。第四詩集を上梓するはこびとなった。パートⅠは『ハーフコートをはおって』に続く作品を纏めた。震災で被災された一人暮らしのお年寄りや障害のある方たちを、訪問するささやかな活動のなかで書いたものである。震災から約十二年の現実は、被災の問題だけでなく、老人や障害者への政策の問題に広がっている。目先の合理主義に適わないことでも、長い目で見たやさしい国を作って欲しいと願うばかりだ。
訪問してわたしと話をする方たちの顔はおだやかである。しかし、弱者とは言い難い、生きる強さをもっている。わたしはその方たちとひとときを緩やかな気持ちで時間を過ごす。おだやかさと生きる強さをもつ人々をわたしは心から敬愛している。
パートⅢに書いた父は、昭和十七年に繰り上げ卒業をして学徒動員された。生き残ったという心の傷をもちながら、戦後を生きた父。わたしの今ある原点は、父の戦争体験であると、この詩集を纏めながら思っている。
学園闘争のあった時代に学生生活を過ごし、そこで感じた矛盾、不条理を抱えたまま二十一世紀に生きているわたし。これからもこのわたしのまま書き続けていくだろう。この詩集からさらに書く意欲を感じさせてもらったような気がする。
(「あとがき」より)
目次
Ⅰ
- 遠い町
- 震災記念公園見学
- 笑う顔
- きんかん
- 七年目の一月十七日
- 一枚のメモ
- 冬の声Ⅰ
- 冬の声Ⅱ
- どくだみ
- 神戸東遊園地 九年目
- おはなみ 九年目
- 炊き出し 九年目
- ききょう
- 足どり
- 十一年目
- 窓からの眺め
Ⅱ
Ⅲ
あとがき