1988年4月、レアリテの会から刊行された西一知(1929~)の第8詩集。レアリテ叢書24。表紙装画は小紋章子。著者は横浜市生まれ、刊行時の住所は新宿区上落合。同人詩誌「舟」(レアリテの会)主宰。
ぼくはその時々の詩がどのような状況のもとに書かれたか、自分ではよくわからない。前詩集でも記したが、詩はほとんどぼくが書くものではなく、どこからかぼくの方へやって来るもののようだ。ぼくは、すばやくそれを記さなければならない。
この詩集は前詩集につづく10年間の作品をほぼ制作順に並べたものである。冒頭の作品は1978年、著者の50代の殆ど全作品ということになる。この間、世界には様々のことがあった。ぼく自身のうえにも、周辺にも色々あった。作品には、ぼく自身が意識しようとしまいと、当然それらは反映されていると思う。しかし、ぼくにはそれはよくはわからない。作品が、ぼくよりもぼくをよりよく表していると思う。ぼくは、ぼくの50代にこれで「サヨナラ」をする
(なんと稚拙で、愚かな生であったことか、と思いながら...)。
(「後記」より)
目次
- 存在、ぼくはそれをポエジイと定義してもいい
- 運ばれる、夏の終わりに
- めくるめく日のなかで
- ぼくは参加する、彼女の時ヘ
- そのとき、矢のように飛ぶ鳥の色は
- 神保町の路地裏で
- 朝 鳥が鳴いている
- 深い泉の底で
- 雪の夜
- 不安
- 五月に
- 何が見えるか
- 生まれたばかりの子どもは
- 明け方ふたつの星を
- 路地の入り口で
- 秋、または火と水へのオード
- 瞬間とたわむれ
- 燃える壁
- 路上で
- 画家ベン・ニコルソンの死に
- 走る電車に乗っていると
- 空
- 作家への警告
- こわい箱、または地震のときの感想
- 部屋
- 物たち
- おかしなNおじさん
- 不安定な感覚の均衡
- イサム・サルタウイの死
- 見知らぬ町で
- 「口腔衛生週間」のチラシの裏に書いた詩
- きみが少しだけ
- 接点
- 風
- ぼくは眠る
- 範疇論・瓶
- 範疇論・せっけん
- 範疇論・めまい
- 範疇論・空
- きみが居る場所
- 範疇論・壊れるもの
- 範疇論・病気
- 東京に雪が降った夜
- 詩法
- モンドリアンに
- 途上で
- 風景となるための通過儀礼
後記