情熱の悪魔 朝海陽

 1960年10月、審美社から刊行された朝海陽の長編小説。

 

 人間は誰でも、幸福を求めている筈である。会津の片田舎の水呑百姓のあばら家に生れた私は全く無学文盲の父母の許に生を受けながら、小学校の一年の時は男性組の総代として「一等賞」と書いた賞状を貰った。(現に所有している)
 しかしそれ以前から、私は子供ながらにも人間としての苦悩を味いながら生きなければならない宿命を負わされていたのかも知れない。
 それに私は小学校へ上る以前に田舎でつくるどぶろくの味と、女の肉体を知った。
 その男(私)が、やがて一片の所謂「赤紙の令状」によって北支から中へと転々と移動しながら朝鮮の京城へ来て、そこでラジオのスピーカーのかすれたような音を通じて終戦詔勅を聞いた。
 やがて妻子の疎開先である千葉県の小櫃という峠の中腹の一軒家に復員した。(ここからこの小説は始まる)
 それからはげしい生活の闘争が展開するのだが……。
 とかく、人間の欲望というものは往々にして人を破局に導くことが多いようだ。
 強烈な色欲のために私は自らを苛なむと同時に妻子にも不本意ながら罪悪をおかした。
 その罪の裁きを受けるようなつもりで私はこの小説を書かないでは死ねないような気がした。一人でも多くの読者によって罪深い私を裁いて頂けたら寧ろ幸せと思う所以である。
 なお、この小説を上梓するに際して、中河与一先生の御指導及び、鎗田清太郎氏、韮沢謙氏の御協力を感謝致します。
(「あとがき」より)


目次

  • 第一章 一粒の麦
  • 第二章 さだめの花
  • 第三章 流転
  • 第四章 狂瀾
  • 第五章 情熱の悪魔

あとがき

 

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