2001年6月、漉林書房から刊行された渡辺元彦による山本陽子論。
山本陽子の詩篇についての論は、まだ緒についたばかりである。というのも、仲々簡単にはその扉を開いてはくれないということもあり、もっといえばこの扉が何か分からないという点にも困っている。一字一句文章を追って行っても、文の体をなしていなかったり、文と文の脈絡がつながらなかったり、時にはわけの分らない造語や、もともと意味のない語などが入り混っているので、必ずといっていい程、途中で追及は頓挫してしまう。それでも繰り返し繰り返し読んでいれば、少しは気付く点もある。そうした気付いた点を、わたしなりに整理して書き留めたものが以下の論稿である。おそらく、群盲どころか蚊の手が触ったぐらいのことしか為してはいない筈である。触っていない部分は広大であり、それについてはもはやわたしの手では触れえない。後から来る人々に期待するほかはない。
第Ⅰ部は、個々の作品および山本陽子の思想についての論稿を集めてある。第Ⅱ部は、そこから掬い出された一般的なるものについて、それを拡張した文章である。最初の文章から最後の文章までには十数年の月日が横たわっている。すべて成立した順序に並んでいる。
猶、参考の為にはじめに主として論稿の対象となる作品群を部分的に(作品冒頭のみ)引用しておいた。「あぽりあ9号追記表」は、作品「あかりあかり」が発表された時、印刷の都合上、造字部が欠字になった為、後からそれを補って読んでもらうように作られた、山本陽子自筆の指示表である。資料価値が高く、散逸するのをおそれてここに載せておくことにした。
(「はじめに」より)
目次
- あぽりあ9号追記表 (山本陽子自筆のコピー)
- よき、の、しⅢ (冒頭部分)
- 泉 (冒頭部分)
- 遙るかする、するするながらⅢ (冒頭部分)
- あかり あかり (冒頭部分)
- 序始(冒頭部分)
はじめに
第Ⅰ部
あとがき