
1972年10月、講談社から刊行された小林美代子(1917~1973)の長編小説。装幀は栃折久美子。著者は釜石市生まれ、刊行時の住所は三鷹市井の頭。
私は飢え通しでした。食べても食べても飢餓感は去らなかった。が、より精神的な飢餓感が堪えがたかった。何でもかまわない、何かでそれを埋めようと必死に努力しましたが、ついに一時もそれを埋めることができませんでした。独身のせいだけでもなさそうでした。
飢餓感は今も去らない、埋められそうな物は判ってますのに、到底手に入らない気がします。飢えを満たす作品を作り上げられるかどうか判りません。ただ夢中で書いて見るしかないのです。
(「あとがき」より)
目次
序章 再会
第一章 故郷にて
- 1 柏屋茶店
- 2 別れの旅
第二章 没落
- 1 貧しい町と人々
- 2 くずれゆく家
第三章 東京放浪
- 1 女中の世界
- 2 母の死
- 3 食堂ガール
- 4 喫茶店時代
- 5 女給落第記
第四章 一家離散
- 1 故郷に待つもの
- 2 女工生活
- 3 弟の死
- 4 ちりぢりに
第五章 戦争
- 1 軍需工場へ
- 2 父、姉、妹の死
- 3 速記者として
- 4 空襲
- 5 疎開地にて
- 6 十七人の団結
- 7 敗戦
第六章 戦後
- 1 焼野原の東京で
- 2 引揚者たち
- 3 生きてゆく
- 4 愛する
- 5 失ったもの
第七章 繭となった女
- 1 ひとりぼっち
- 2 死の誘い
- 3 発病
- 4 精神病院
- 5 狂気と正気の境に
- 6 一行の文章から
- 7 時計をとめて
あとがき