
1975年12月、土曜美術社から刊行された木原実(1916~2010)の第1詩集。装幀は佐伯義郎。著者は政治家。刊行時の住所は市川市北方。コスモス同人。
一九四二年、兵隊として大陸の荒野に送りこまれたときから隠れたように詩のようなものを書きはじめ、それからの三十年余り断続的に詩に親しんできた。詩に親しむということは、私にあっては気恥しいほど、私的ないとなみに属する。私はただ自分のためにだけ、自分の小さな詩の世界を持った。わずかな詩を書いたり読んだりすることは、だから私にあっては、ときに言いようもない自己確認の手だてであり、たいていは自分のセンチメントに自分を遊ばせるはかない時間の領域を持つことでもあった。ただ、激動に私自身もさらされつづけてきた時代を、草食動物のように、意気地なく逃げまどいながら生きてきたものにとって、それはやはり必要な業のようなものであったとおもう。
戦野の中で書きとめたものと、七〇年ごろまでに書いた作品の中から多少の選りわけをして、ほぼ年代の順に並べて、この詩集を編んだ。私にはむろん初めての詩集である。秋山清が親切な文章を書いてくれた。良い友だちを持って有難いとおもう。
(「あとがき」より)
目次
- ウスリイの唄
- 烏蘇利詩篇
- 戦場
- 風の中
- 月牙
- 流木拾い
- 春
- 鶴
- 鏡
- シベリア鉄道
- 漂う草
- 凍魚
- 手帖の中の詩
- すっぽん
- 積乱雲の中で
- 湿地の歌
- 極地
- 草の海で
- 花のいろ
- ハルピン近郊
- 北陵
- 渾河大橋
- 匪の界隈
- 白塔
- 歓喜仏
- 山塞
- 部落
- 山姥
- 流氓
- 鴨緑江畔
- 渤海附近
- 鄉愁
- 生き残った神
- 村道
- 東北紀行
- 最上川
- 銅像
- 夕日の中
- 日曜日の神戸
- 干潟
- 満月
- オリンピック
- 鷲
- 不毛地帯
- 石
- 森の中
- 壱岐
- 春の頑具
- 竜
- 助けてくれ
- 備忘
- 乾いた季節
- 汽笛
- 風の音
- 脱走
- 椰子
- 西日の中
- 超音速機時代
- 象徴
あとがき