
1973年2月、葦書房から刊行された森沢友日子の第1詩集。装幀は片山昭弘+橋本義行。
森沢友日子の詩の世界を、ちょっと苦心して形容すると、石英と雲母と長石が合成して一個の岩塊とならずに、それらが空間に微粒子状に拡散してキラキラ光っている感じである。きょうの詩人たちの内部世界に存在するキヤオスは、おしなべて読者に陰湿と言っていいほどの暗い印象をあたえるが、森沢さんの場合は、それがつつぬけるほど明るく、そしてドライだ。人柄もあろうが、持って生まれた森沢さんの言語感覚に、そういうものが素質として具わっているからだろう。別に人眼をそば立たせるようなパンチの利いた表現はなく、文体はやさしく平易なのに、言葉と言葉のかんけいにドキッとさせられる屈折や飛躍があるのも、年月をかけて習いおぼえたテクニックだとは思えない。いずれにしても、稀有な才能だと言わなければならない。
比喩を弄したついでに言えば、微粒子となって空間に拡散充満している石英、雲母、長石の破片は、庶民の暮しの中にある飢えや怨念のミクロの結晶なのだ、森沢さんは、それを日常現実と平面的に重ね合わせてすますことに満足できず、つまり岩のごとく置いておかずに、宇宙空間ともいうべき次元に微粒子状に散らして、それらの物の光沢を相互に相反映させて見せた。
森沢さんの詩を読んだのは、こんどがはじめてではないが、詩集のゲラを見て、私のすぐ近くにこんなすぐれた詩人がいたのかと、いままで気ずかなかった大発見をした想いである。この詩集との出会をよろこびたい。
(「跋・小野十三郎」より)
目次
- 明日
- いもうと
- カンナ
- この三月
- 消えないから
- 足の大きな娘がいて
- 水のない夏
- 夏草の中を
- 六月梅雨
- 望郷、そしてきいろいらくだ
- 埋れ木
- 秋恋慕
- よる・人形つくり
- 詩のまえ
- 盗癖
- 四の月
- 伝説について(ルネサンス)
- はなしのはなし
- 夢の時間
- やさしい関係
- 風の人形
- 未練
- 桃山御陵無理心中
- 二月
- 絶つ
- 旅
- 湖
- 十二月はクリスマス・キャロル
- 芋を掘る
- 壺
- 人影の街
跋 小野十三郎