
1958年12月、的場書房から刊行された永瀬清子(1906~1995)の第7詩集。
「薔薇詩集」は今までの私の詩集のうちでは最も女性的なものでしょう。
この前に出した詩集「山上の死者」のあとがきにも一寸書いたように、この詩集はそれより以前に、今からでは十年ほども前に書かれました。出版までに長くかかった理由としては、これが何となく自分一人のものに思えていたことと、それ以後に書いた他の二ツの詩集に手間がかかって、こちらは自然もうすんでしまったもののように自分では思っていたからです。
その年月のうちにこの原稿は古びて赤くなってしまい、時々読み返しているうちに殆んどどの詩も暗誦出来るようになりました。
最近二三の友人が読んで熱心にすすめて呉れるのと、突然思いがけぬ病気などしたことも手伝って、やはり出版して置く気になりました。
これらの作品は戦後の若い人々の詩と比べたら、かなりもうちがったものにちがいありません。又抒情詩と云っただけでも時代おくれと思われた時期もありました。しかし本当は非難されるほど充分に「抒情詩」が書かれたわけではありませんでした。いまは却ってすべてそうした先入主に捕われずに読まれる時が来ているようにも思われます。
戦争の間押しつぶされていた人間性をとりもどして、これらの時期私は感情の原型と自由のはばたきを書きたかったのです。けれども人間の愛は常に慟哭をともない、これらの詩はつたなくそのことを書きとめた事になるのでしょう。
(「跋」より)
目次
・第一部
- 見えるものの歌
- 私の馬は
- 告知
- 渦
- 五月には
- 魔術の本
- 願わくば
- 夕ぐれ
- 薔薇
- マイダス王
- 蛇
- 繭一つ
- 芯
- 象
- 牢獄
- 我のなべて
・第二部
- 花の道にて
- かなたのうすぐらい山かげに
- 青麦のゆれの中にて
- きわめて小さい炎と燃えて
- 夏から秋へ
- 焼き傷
- 岸辺の沙の
- 内面の雲
- 金星
- 貴方の手で
- 一日昔の風が
- 月について
・第三部
- めぐつてくる五月には
- 暁が来た時に
- 夕陽の中に
- 朝になると
- 夜
- 川水の渦巻の中には
- 写真の中の
- 私の足に
- この海の
- 私はその人を征服したのだろうか
跋
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