
1991年5月、花神社から刊行された高田敏子(1914~1989)の遺稿詩集。編集は新川和江、装幀は熊谷博人。
高田敏子さんが他界されてから、早くも二年近い歳月が過ぎようとしている。
一九八五年十月に花神社から出版され、現代詩女流賞も受賞された「夢の手」が、高田さんご自身によって編集された最後の単行詩集となった。以後、主として「山の樹」「桃花鳥」などに発表された作品と、未発表と思われる原稿用紙に直筆の詩稿、新聞雑誌の求めに応じて書かれた比較的短い季節の詩など、ご長女純江さんが時間をかけて丹念に整理された百三十余篇に、このほど目を通させていただいた。
全詩集別巻というかたちで出版することも可能な作品量である。しかしひと先ず、『夢の手』に続く単行詩集として、この中の一部を出版したい、という純江さんのご意向表示があり、それにはわたくしも賛成だった。近作をまとめて世に問う単行詩集は、現役の証しでもあるからである。
高田敏子さんは、息をひきとられる寸前まで、現役の詩人であった。
既発表の作品にも、折あるごとに推敲を重ねられたらしい鏤刻のあとが随所に見られ、筆圧の極度に弱まった原稿用紙の文字は、病状がかなり悪化してからも詩作のペンを執られたことを、如実に物語っている。詩も愛も、そしておそらく身の回りの小物や端切れのたぐいも、投げてしまう、ということを高田さんは、最期までなさらないかたであった。
ここに選ばせていただいた四一篇は、制作順にこだわらず、味わい易いよう三つのPARTに分類した。Ⅰには、まだお元気で明るい笑顔も見せておられた明け暮れがうかがえる作品を、Ⅱには、よく内外の旅をされた折り折りの詩を、Ⅲには最晩年の、人生についてわけても死についての哲学的思索の影が、いちだんと深まりを見せている作品群を置いた。『夢の手」以前の作品も、わたくしの好きな詩をいくつかは編み入れたが、いずれも、これまでの単行詩集及び一九八九年出版の全詩集には、収録されていない詩篇である。
絶筆となった作品「その木について」を標題にしたこの詩集は、高田さんのこれまでのどの詩集にも、まさるとも劣らない内容の詩集であると、わたくしは固く信じている。
(「あとがき/新川和江」より)
目次
Ⅰ
- リンゴの花
- 楡の木
- 冬の満月
- 木の香
- たのしい部屋
- かがみの中
- 桜
- ボタン
- 野ばらの花
- 影
- 雨の音
- 沈丁花の匂う道
- 恋文
- 光
- 鐘の音
Ⅱ
Ⅲ
- 堤の上
- 食事
- 窓の影に
- 鶯の声
- 流れ
- 影
- なわとび
- 山への思い
- 冬の樹
- 樹氷
- 白い豹
- その木について
あとがき 新川和江
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