
1996年9月、短歌新聞社から刊行された河野裕子(1946~2010)の第6歌集。装幀は朝倉摂。現代女流短歌全集1。
『紅(こう)』(一九九一年刊)に続く第六歌集である。ここには、一九八九年から一九九〇年夏頃までの約一年半の作品三百余首を収めた。長い昭和が終り平成になったこの時期、私自身にも幾つかの変化と転機があった。住居を滋賀県から再び京都へ変え、二十五年間籍を置いていた「コスモス」を退会し、「塔」に入会した。各地での講演や選歌の場が多くなり、一九九〇年六月から、生方たつゑ氏に代って、毎日歌壇選者となった。
歌集名は、迷うことなく『歳月』に決めた。いつか私も四十代前半にさしかかり、過ぎてきた歳月、残された歳月を、どのような場面においても意識せざるをえなくなったからである。殊にそれは、変化し成長してやまない子供たちを目のあたりにすることによって、深い感概を伴うものであった。子供たちは余りにも速く育ってしまう。その速さを、しばしば私は、はかないという言葉で表現するしかなかった。この世で家族でいられる時間は、誰にとってもそんなに長いものではないのである。
歌を作ることは苦労ではあるけれども、その何倍ものよろこびであり楽しみである。この時期も、精力的に多くの歌を作ることができた。作り続けること。それが前進力である。
(「あとがき」より)
目次
・一九八九年
- UFO
- 梅林
- 指めがね
- 畳
- 混沌
- 桜谷
- 昭和の子供
- まぶしい黒
- 爪を刃に
- ひと粒のひかり
- 死はいつも
- 萩の歌
- 日照時間
- したひたてん
・一九九〇年
- 歳月
- 夜は何かが
- 紙風船
- 枢(くるる)
- 灰いろの人
- あと四十年
- 赤土
- 川辺に住む
- 大きな河
- 澤瀉博士
- ユウコサーン
略歌歴
あとがき