
2007年8月、北冬舎から刊行された佐伯裕子(1947~)の第6歌集。装幀は大原信泉。
大きな夏空を静かに映しとる湖面のように、ゆらゆらと映しだされる光景を、あるいは現実とも、非現実ともつかない懐かしい時空を、もう一度息づかせ、喜び、悲しみ、そこに生きなおしたいと思ってきました。けれど、時代が不穏に動くなかで、この歳月ほど、日本人である自分の危うさを感じ日々はありません。生きなおしたい、という一人の感傷だけではすまない現実をつきつけられるばかりです。
不安感がしだいに濃くなるとともに、遠い彼方を憧憬する思いも強くなるいっぽうです。いまのこの一瞬が、すでに思い出であるような時間を追い求めながら、何ものかへの郷愁を募らせていく日々がつづくのだと思います。
『みずうみ』は、さきごろ上梓した『ノスタルジア』につづく、2002年の秋から2006年夏までの作品を収めてあります。わたしの第六歌集になります。
『ノスタルジア』にひきつづき、応援してくれた歌の仲間、装丁の大原信泉氏、北冬舎の柳下和久氏に、心から御礼申し上げます。また、近藤芳美先生のご冥福をお祈り申し上げます。
(「あとがき」より)
目次
・一
- 谷折り
- 生命
- みずうみ
- 無のわらべ唄
- 春の肋
- 居間
- 何かまだ
- さくら
- いもうと
・二
・三
- 室内
- 動詞
- 一五一年目の桜
・四
- 神園
- 歳月の渦
- 森
- 禍福
- 春の家族
- 水たまり
- 天動説
- 砂の音
- 夕日
・五
- 白道
- 大きみずうみ
- 二○○五年八月十五日
- 十年
あとがき