
1992年5月、ワニ・プロダクションから刊行された甲田四郎(1936~)の第5詩集。著者は東京生まれ、刊行時の住所は大田区大森北。
人が一所懸命に物事をする姿は傍からはこっけいに見えます。でも私は一所懸命が好きです。傍からこっけいに見るのも、こっけいに見えるだろうと自覚しながらなのも、自覚できないのも好きです。生命の輝きって、まず始めにはそこに起こる笑いや悲哀のことではないでしょうか。一所懸命も百人いれば百通りあります。私が九十九菓子店の夫婦の場合を書きとめておきたいと思ったのは、彼らのはどうも方角が違うように思われたのと、いっしょうけんめい、ひらがなで書くほうが似合うように思われたからです。私もまたいっしょうけんめいなのです。
いま独立零細自営業の店は急速に消えつつあるかに見えます。しかし私は九十九菓子店が、彼ら夫婦の暮らしが、続くことを願っています。そんなとき、多くの人の励ましに支えられてやっとこの詩集ができました。ワニ・プロダクションの仲山清氏を始めみなさんに厚くお礼を申し上げます。
なお、これはこの三年ほど雑誌「鰐組」に書き継いでいたものに詩誌「交野が原」での一篇を加えてまとめたものです。既刊の『時間まで、よいしょ』『大手が来る』の続編のつもりです。
(「あとがき」より)
目次
- 入れ歯と眼鏡
- 九十九菓子店の夫婦
- 串だんご
- 三年目
- 豆だいふく
- 消毒
- 時計
- 約束
- 鯉
- ヤモリ
- ガンバラナクッチャ
- 鹿の子
- 押される
- 黄金の日々
- 息子
- 鮭
- 魚
- 弥生堂さんの鶏小屋
- 夫婦で寝酒
- 極楽寺坂
- エメラルド
- きみしぐれ
- いなりずし
- きみしぐれ・2
- 帰郷
あとがき