
1998年5月、ワニ・プロダクションから刊行された愛敬浩一(1952~)の評論集。
本当を言えば、この評論集は十年前に出すべきものだった。「藤井貞和試論」は思潮社の25周年記念の賞に応募して、最終選考で落選したものである。選考の様子は〈座談会〉として、当時の『現代詩手帖』に載っているが、清水鱗造氏の作品が入賞して、鮎川信夫が「もう一つ挙げれば」ということで、わたしの作品を名指ししてくれたことだけが、わたしにとって救いだった。その時期、三島由紀夫論を都合三回、群像新人賞に応募し、二次通過二回、一次通過一回という結果で、早稲田文学賞や関西文学賞にも、最終選考で落ちている。いや、くりごとを言いたいのではない。久しぶりに自分の文章を通読して、自分が何を考えなければならないかが、少しはわかったような気がし始めているのである。
初出一覧で明らかな通り、ほとんどは八〇年代後半に発表されたものだ。そこから「詩的八〇年代のために」という副題が生まれた。これに『詩学』(一九八七年四月号)の座談会をプラスすれば、〈詩〉についての、当時の私の考えのほぼすべてになると思う。それにしても、『詩的現代』と『イエローブック』の時代について、いつかまた書くことがあるだろうか。
なお、題名は、詩集『しらすおろし』の付録に書いていただいた斎藤正敏氏の文章から採った。千葉にいたころ、氏に詩誌『光芒』に誘われて世界がひろがったのである。
ワニ・プロダクションの仲山清氏には、『イエローブック』時代からすると、十年振りにお世話になった。
(「あとがき」より)
目次
Ⅰ
Ⅱ
- 六篇の詩
Ⅲ
- 書評一束
- 詩集評86~88
Ⅳ
- 歌謡 「マホガニーモーニング」と「夜へ……」における山口百恵
- マンガ 内田善美『草迷宮・草空間』
- 映画 『海燕ジョーの奇跡』
- 『1999年の夏休み』
- 小説 村上龍『テニスボーイの憂鬱』
- 吉本ばなな『白河夜船』
- 批評 川本三郎『都市の感受性』
- 萩原朔太郎における詩と生活
Ⅴ
あとがき