
2010年12月、洪水企画から刊行された吉田義昭の詩集。装幀はは柿本忠男。刊行時の著者の住所は板橋区四葉。
今、私の前に、昭和六十年四月一日発行の「長崎新聞」がある。その文化欄に「海からの声」が掲載されている、変色し、インクの滲んだ新聞だ。私は長崎半島で生まれたが、幼い頃だったので、半島で暮らした記憶がない。時々訪れた故郷の原風景と、叔父や叔母や従兄弟たちから聞いた話をモチーフにしてこの作品は生まれた。もし、被爆した叔父さんの死の知らせが届かなかったら、この詩集は生まれなかったであろう。この詩集の原型は既に三十年以上も前に完成していた。故郷と家族と海をテーマにした作品のうちの数編は新たに書き足した。四十年間をかけた詩集となった。
家族と死に関するテーマの詩が多いが、二年前に、自分が病気で死にかけたこともあって、この詩集がまた甦ってきたのだと思う。しかし、ここからまた、新たなテーマで詩的な出発をしなければならないとは思う。
これらの作品は、「長崎新聞」、「詩学」、「詩と思想」、「SPACE」、「鰐組」などに発表した。
(「覚書」より)
目次
Ⅰ
- 海の手紙
- 水に映る家
- 寂しい遺伝子
- 海流
- 善人の系譜
- 漂流
Ⅱ
- リンゴの木
- 海の宿題
- 先生の休暇
- 夏の手紙
- 天気図を描きながら
- ぶどう畑
Ⅲ 影絵遊び詩篇
- Ⅰ蟻
- Ⅱ影絵遊び
- Ⅲ猫
- Ⅳ影踏み
- Ⅴ月の庭
- Ⅵ夏の庭
- Ⅶ屋根
- Ⅷ団らん
- Ⅸ蛇
- Ⅹ夏の暦
Ⅳ
- 海の時間
- 大陸は移動している
- 大人の日の実像
- 小さな家族の小さな歴史
- 海からの声
- 海の見えた時代
覚書