1985年12月、冬至書房新社から刊行された戸張みち子の詩集。
甲羅ならぬ、わが身に似せた穴を掘り、ひたすら、子供、家庭、それに仕事と遮二無二働き続け、大局を見る眼は持たず、視野せまく生きて来ました。
幼時、七歳で母を失い、それからの、子を持たぬ継母との生活の様々な経験から、どうしても母親は長く生きなければと思いつめて来たのですが、どうやら卒業の見込みがつきそうになりました。
これからは自由に暮したいと考えはじめています。
店を仕舞って下町に移ってから二年半、前後五年間ばかりの作品をまとめました。
これからが、本当の自分のための生活となればと希っております。
(「あとがき」より)
目次
Ⅰ
- 芽吹く日
- 東京の片隅で
- 鷺
- 早春
- 五月の詩
- ピラカンサ
Ⅱ
- 水中花
- つるばら
- 濡れる緑
- 雲
- 源氏螢
- 会津の夜
- 雲を撮る女
- 夜ごとの来訪者
- 蝉のむくろ
- 酷暑
- 夏の終り
- 藤棚の下
Ⅲ
- 少女の描くもの
- 絵になる
- 九月の雨
- 橋の袂
- 雨の国道
- 仏手柑
- 霧
- 短章
- まつり太鼓
- 秋のたより
- すれ違い
- 糸
Ⅳ
- 冬空
- 雪の山で
- 夜の雪
- 冬の訪れ
- 魚の骨は白い
- 伸びていく
- 冬日
Ⅴ
- 数字
- ひといくさ
- 車中で
- 借家
- おふくろ
- しっぺいがえし
- お別れ
- 海鳴り
あとがき