2017年6月、花神社から刊行された明峯明子(1915~2002)の全詩集。編集は明峯晶子。装幀は熊谷博人。装画は菊地毅一「横浜風景」。明峯明子は旧姓高橋。父、高橋清七は前橋の煥乎堂書店店主。高橋元吉は叔父。
この全詩集は、明峯明子が生前に出版した三冊の詩集と同人誌・個人誌に掲載した詩篇を収録している。ある時知り合いの若い女性が母の詩集に目を通して、自分も大切な人を何人も失くしてきたのでよくわかると言ってくれた。母の没後すでに十五年にもなるが、あえて全詩集を今まとめてみるのも、あるいはこのような読者に出会えるかもしれないという気持からである。母は若い頃、仲の良かった妹から詩だけ書く人になってと言われたという。この妹はノートの端に「なつかしいことがすべてだ」と書き残して夭折した。母の詩は妹への返信であるのかもしれない。なお、母の残した詩集などには、多くの訂正や削除を指示する書き込みなどがあったため、なるべくこれを組み入れることにした。また、明らかな誤字は訂正し、読みにくい漢字のいくつかにルビをつけた。本書には同題の詩篇(「新年」「五月」「部屋」など)が何篇か含まれているが、これらはすべて原題のままであり、編者は識別のための変更を特にほどこさなかったことをおことわりしておきたい。
(「あとがき/明肇晶子」より)
目次
ひとけなきうた
Ⅰ むかしのうた(1938~1949)
- 夏の昼
- 冬の昼
- 夏
- ふるさとの家
- 出発
- ある窓辺で
- 夜更けの窓
- 夏の日に吹く秋風は
- 夏――妹に――
- 新年
- あじさい
Ⅱ 雨のテラス(1953~1962)
- 雨のテラス
- 古い五月
- 水色の窓
- 落葉
- 父の部屋
- 日々の憂いは
- 風のように
- 五月
- 在りし日
- 手
- ゆく夏
- 夏の蝶
- 秋の蝶
- 荒地野菊
Ⅲ かたちのない――(1962~1968)
Ⅳ 小さな椅子(1976~1977)
- 夏の終り
- 小さな椅子
- 新年Ⅰ
- 新年Ⅱ
- あとがき
窓へのノート
序――窓
Ⅰ 古い十四行詩など
- 1月 夜の雨
- 2月 熱があるので
- 3月 春の嵐
- 4月 角形の日々
- 5月 廃墟の窓辺
Ⅱ 果実
- 6月 あじさい
- 7月 夏が、瓶に
- 8月 夏の落葉
- 9月 葡萄
- 10月 林檎
- 11月 レモン
- 12月 冬の樹
Ⅲ 硝子のうちそと
- 1月 ゆうぐれ
- 2月 早春
- 3月 橫顏
- 4月 廊下
- 5月 屋根
- 6月 水晶
- 7月 読書
Ⅳ 窓へのノート
- 8月 夏草
- 9月 迷路
- 10月 黒い葡萄
- 11月 落葉
- 12月 坂の中途の灰色の家
風景画
- ある頁に
- 絵はがき
- 秋の皿
- 八月の光
- 海――室内の――
- 落葉
- 光と影
- 部屋
- 鐘
- 日曜日
- 風景
- 三日月
- 五月
- 雨の街
- 八月
- 梨
- 十二月
- 新年
- 窓
ノオト
詩集未収録詩篇
1「Cybele」から
- 十一月に
- 早春
- 夏の昼
- 石壁の家
- 五月
2「EOS」から
- 風景画――花――
- 風景画――鏡――
- 夏の嘆き
- 七月
- 暗い日
- 黒い窓のなかで
- ある午後
- 部屋
3「海都」から
- 夜明けの月
- 風景画――二月――
- 風景画――四月――
- 風景画――窓――
- 風景画――九月――
- 十月のイメージ
4「いしゅたる」から
- 五月の光
5「Jinn」から
- 五月のイメージ
- 二月 日記のように
- 七月 群青
- 八月 バーント シェンナ
- 九月 ガランス
- 十月 鬱金いろ
- 五月 トルコブルー
- 八月 褪せた白
- 二月 錆びた赤
- 七月 梔子色
- 七月 微光
- 七月 仄音
- 新年薄暮
- 手
- 廃夏
- 日記―花叫
- 黒い窓
6「仮象」から
- 室內風景
- 瓶のなかで
7「Rue」から
- 室內Ⅰ
- 室內Ⅱ
- 日記
- 樹の花Ⅰ
- 樹の花Ⅱ
8「夢人館通信」から
- 坂
- 六月 翠いろ
- 腕
- 樹の花
- 十二月
エッセイ
あとがき 明峯晶子
収録作品書誌・初出一覧
関連文献
年譜