2003年1月、本阿弥書店から刊行された錦見映理子の第1歌集。装幀は名久井直子。ホンアミレーベル1。
夏の終わりの雨の夜だった。歌集のためにまとめた原稿を、初めて人に見せた。中野の喫茶店で、信頼する俳人で歌人でもある岡田幸生さんの前に座って、私は緊張していた。飲んでいる紅茶がおいしいかおいしくないかよくわからないまま、黙って彼が読みつづけるのを待っていた。「ガーデニアってなに?」と岡田さんが急に顔を上げて聞いた。「くちなし。白い花」と答えると、「タイトルはこれがいいよ。ガーデニア・ガーデン」と彼は言った。歌集のタイトルをまだ決めかねていた私は、候補のひとつでもあったその言葉が彼の口から発せられたのを聞いて、なんだか興奮した。それだ、という感覚があった。
(「あとがき」より)
目次
Ⅰ
- 庭園と熱病
- 風葬と密会
- 驟雨と蜂蜜
- 白夜と魚影
Ⅱ
- 蛇の眠り
- 白い終電
- 火をくぐる
- 夕闇の家族
- 外科病棟
- 花の蜜
Ⅲ
- 暗室へ
- 魚眼レンズ
- 婚姻届
- 冬の婚
- 夜の重力
あとがき